劇団四季時代の横山だいすけさん(提供)

 小学生の時に、こんなことがありました。学校の行事で音楽発表会があり、クラスで「ソロで歌いたい人!」と先生が呼びかけました。そのとき、本当は手を挙げたかったんです。でも、「うまい」と言われたことがなかったので、歌は大好きだけれど、いまひとつ自信がなかったんです。もじもじしていたら、友達がビシッと立候補して、立派に歌い上げました。ささいなことですが、小学生の僕にとってはこれが大きな挫折の経験となりました。

 大学に入ってからも、コンクールでは何度も何度も落ちていました。「あなたは、声はいいけれど技術はもう少し」。こんなことばかりでしたね。

 歌のお兄さんになりたかったけれど、当時は「目の前の」ことをとにかく一生懸命にやりました。「音楽大学に入学する」「クラシックを学ぶ」「ドイツの歌を学ぶ」、劇団四季に入団したら、踊りながら歌える「からだをつくる」……。

 そんなふうに、「今」与えられたことに必死で向き合い続けているうちに、歌のお兄さんのオーディションの知らせがふっと届いたのです。

人生において「無駄」なことはなにもないと実感しました

―――そのオーディションで見事、合格。ついに歌のお兄さんになれたのですね。

 オーディションでは、大学時代や劇団四季で学んだことのすべてを生かすことができました。点と点がつながった、そんな感じでしたね。そのとき「人生において、無駄なことはひとつもない。すべてつながっているんだな」と感じました。

―――なかなか目標に届かなかったとき、「もういいいや」とあきらめようとしたことはありましたか?

 投げやりな気持ちになったことはありましたが(笑)、あきらめようとは、一度も思いませんでした。そのモチベーションは「歌が好き」という気持ち、これだけです。

 歌のお兄さんになりたくて、やっとなることができました。でも、最初の3年間は「前のお兄さんがよかった」なんて声もたくさんあったのです。そんなときは「あれ? 僕はなぜ今ここにいるんだろう」と思うこともありました。でも、「好き」のエネルギーって、なによりも大きい。目の前のしんどいことも、その先の「好き」を目指してがんばれてしまうのです。

 イベントなどで子どもたちと接する機会があるときは、「自分が『好き』と思うことを見つけてみてね!」とよく話しています。それが自分の夢につながるかもしれない。それって、すごいことだと思うのです。

※後編<横山だいすけに聞く4歳娘の育児「子育ては、歌のお兄さんとして子どもとかかわるのとは全然違いました」>へ続く

(取材・文/三宅智佳)

【後編】横山だいすけに聞く4歳娘の育児 「子育ては、歌のお兄さんとして子どもとかかわるのとは全然違いました」
著者 開く閉じる
三宅智佳
三宅智佳
1 2 3