「106万円の壁を超えると、社会保険料の負担が生じて手取りが減るデメリットばかりがいわれているようですが、社会保険に加入すれば、年金の上乗せや出産手当金、病気やけがで会社を休んだときの生活の保障となる傷病手当金が給付されますし、保険料を会社が半額負担してくれるメリットのほうが大きいと私は考えています。厚生労働省のアンケート調査でも、パート従業員の約6割が『社会保険に加入できる求人』を『魅力的』と考えています」

 次の「130万円の壁」も社会保険料に関わるものです。従業員50人以下の会社で働く場合でも130万円を超えると夫の扶養から外れ、国民年金、国民健康保険に加入しなければなりません。会社の保険料負担はありませんから、手取りにかなり影響してきます。ただ、佐藤さんはこう話します。

「従業員数50人以下で、本来はパート従業員のような短時間勤務の人は会社の社会保険に入れないような規模の会社であっても、人手確保のためにパート従業員が会社の社会保険の適用を受けられるようにしているところもあります。こうした会社で働けば、社会保険の本人負担は減ります」

「106万円の壁」と「130万円の壁」を超えた場合を試算

 では、実際に壁を超えると手取り額はどのように変わるのか、佐藤さんにわかりやすく試算してもらいました(図)。東京都江戸川区在住を想定し「20時間の壁(いわゆる106万円の壁)」と「130万円の壁(会社の社会保険に加入できない場合)」について、手取りの差を比較しました。

 まず「20時間の壁」をみてみましょう。週20時間を超えて働き、なおかつ年収が106万円を超えるケースと、週19時間勤務のケースを比較します。週19時間勤務の場合、年収は114万9044円になります。所得税・住民税が引かれ、手取りは112万3744円で、約2万5000円減ります。これが週20時間勤務になると、年収120万9520円、手取りは101万9271円で約19万円の減少となります。一方、出産や傷病の際には、それぞれ手当金が日額2180円給付され、障害・遺族年金などの給付対象にもなります。

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