おすすめポイント

 冒頭から「やあ、こんにちは。わたしはたまご。いまから、わたしのはなしをするからね。よくきいておくんだよ」とこちらに向かって語りかけるたまご。ちょっと偉そうで、ひとめみたら忘れられない存在感です。

 注目ポイントは、鉛筆をつかって描きこまれた精緻な絵。つるっとしたまるいフォルムから、すっと細い手足を伸ばしたたまご。小さく穴があいたような目や、わずかにゆがんで驚いたり呆れたりする口元の表情はいくら見ても飽きません。

『たまごのはなし』(しおたにまみこ 作/ブロンズ新社 刊)

「さんぽ」ではキッチンの台を降りて歩き出したたまごとマシュマロ。途中、リビングを歩いていく白い二人を、ソファーの上のクッションが「よごれてしまったらとりかえしがつかないわよ」としきりに心配するので、マシュマロとたまごは「わたしたちはあなたのしんぱいをしてあげるよ」と言い返します。「ほこりっぽいのがしんぱい」「おしつけがましいのがしんぱい」と真顔で言われたクッションは、沈黙。読めばよむほどクセになるおもしろさです。

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