絵本はたくさん読んでくれたけど、絵本の次のステップにはどんな本がいいんだろう?――。そんな悩みを抱えるママ・パパに向けて、幼年童話を中心に、絵本から読みものへの橋渡しとなるおすすめの一冊を紹介します。
あらすじ
2週間前、遠い町からリュウくんという男の子が転校してきました。体は小さいながらも運動神経は抜群。日に焼けて元気いっぱいのリュウくんは、あっという間にクラスの人気者です。でも、隣の席のレミは、リュウくんが苦手。レミががんばってやってきた算数の宿題を勝手に写したり、給食で最後に食べようとしていた好物のからあげを横取りしたり、レミの嫌がることばかりをするからです。
今日は、2年生のみんなで育ててきたサツマイモを掘り上げる日。でも、レミは不機嫌です。リュウくんと入れ替わるように、引っ越してしまった仲良しのサキちゃんと一緒に大切に育てたサツマイモだから。「どうして リュウくんが おいもを ほるの?」「おいものこと、なあんにも やっていないのに」……。そんなモヤモヤした気持ちのせいか、芋掘りが始まるとおなかの調子が悪くなってしまったレミ。「きっと リュウくんが、サキちゃんの 分も、わたしの 分も、ほっちゃうんだ……」と悲しくなりますが、思いがけないリュウくんの行動に触れて、気持ちに変化があらわれてきます。
おすすめポイント
小学校はいろんな性格や家庭環境の子と交わり、人間関係を育んでいく場所です。全員と意気投合するなんて無理な話。性格や行動ペース、好きなことが似ている子もいれば、全然合わないなんて子も。苦手な子と接したときに抱いてしまう、子どもの素直な気持ちが描かれているので、レミに感情移入してぐいぐい読み進めることができます。
仲良しだったサキちゃんがやさしくおっとりした性格だったこともあり、ちょっとガサツで自分勝手なリュウくんが苦手なレミ。どうしてもリュウくんの嫌なところばかりが目についてしまいます。ところが、おなかが痛くて芋掘りができなくなったレミの分までリュウくんがお芋を掘ってくれてびっくり。しかも、お芋が入った袋をレミの家まで届けると言ってくれて……。レミが知っているリュウくんとは違う一面を垣間見て、リュウくんに対する態度が少しずつ変わっていく様子がていねいに描かれています。
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