「法律の規定もあり、給食費は保護者が支払うものとこれまで当たり前に考えられてきました。それがコロナ禍や最近の物価高で経済的に苦しい家庭が増え、ここ数年で給食費を無償にする自治体が急速に増えてきました。無償化の広がりは保護者の経済的な負担軽減のためにも好ましいことですが、給食によって子どもが栄養バランスのとれた一食を食べることができるという食の権利の保障こそが無償化の最大のメリットなのです」

 現状では無償化できている自治体と、そうではない自治体があります。つまり、自治体間で費用負担の格差が生じています。また、無償化を実現できても、いまのような食材費の上昇が続くなか、給食単価を維持しようと思えば、質の低下や量の減少を招くことにもなりかねません。では、どうすればいいのでしょうか。福嶋さんはこう指摘します。

「給食費が有償か無償かをいう前に、まず完全給食の提供を受けていない子どもが少なからずいるという現実をみる必要があります。特に公立中学校では全国で264校、約6万3000人の生徒が完全給食の提供を受けていません」

「(児童自立支援施設など)ほかの施設で昼食が提供されているため」というのがその理由ですが、そもそも、法律上、給食の提供は学校設置者(公立学校の場合は自治体)の「努力義務」と規定されているためです。福嶋さんはこう強調します。

「努力義務にとどまっている限り、自治体間の格差は解消されませんし、給食の提供を受けられていない子どもをなくすことはできません。私はまず、子どもの食の権利保障の観点から、国の責任において完全給食の提供と給食無償化の枠組みをつくるべきだと考えています。この観点から取り組めば、十分な給食単価を設定することになり、質の低下や量の減少は起こりえないでしょう」

 日本は1989年に国連総会で採択された「子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)」を批准しています。条約締約国は子どもの成長発達権を確保する義務があり、食の権利確保はその成長発達権に含まれると考えられています。

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