和木町では学校給食法成立前の1947、48年ごろから小学校のミルク給食が始まり、52年に小学校の完全給食が無償化されました。その後、中学校、幼稚園の給食も無償化されています。給食制度のスタート時から一貫して無償化を続けている自治体は全国でも和木町だけといわれています。

 なぜ、和木町では給食を無償化できているのでしょうか。和木町教育委員会の担当者はこう説明します。

「給食が始まった当時(当時は和木村)、地元企業からの税収が多く、村長が住民に還元できるものはないかと考え、給食費を無償化したのがはじまりです。当初のごく短い期間だけミルク代だけを徴収していたようですが、給食費自体は無償となっていました」

 和木町は「日本初の石油化学コンビナートの町」です。給食開始当時は、こうした地元企業からの税収があり、財政にも余裕があったことがうかがわれます。

「ただ現在は、当時ほどの税収はなく、財政状況は厳しいものがありますが、子育て支援の一環として、保護者の負担軽減を図る観点から無償化を継続しているところです」(和木町教育委員会の担当者)

 和木町の給食無償化は、町民はもちろんのこと、周辺自治体にも広く認知されているといいます。同町への移住を促す際のアピールポイントの一つにもなっています。下校中の子どもたちが給食センターの給食調理員や配送員に「給食、おいしかったよ」と気軽に声をかける光景が日常的になっています。

 和木町の一般会計予算は23年度約41億6000万円。給食材料費(決算ベース)は4540万円で、予算の約1%を占めています。小学校の1食当たりの食材費は285円で、月額は全国平均4688円を少し下回る程度です。人口規模や物価水準などが異なるため一概には言えませんが、ほかの自治体も予算の配分次第でねん出できない金額とは言えないのではないでしょうか。

子どもの権利を保障するため国が無償化の枠組みを

 そもそも学校給食は「自治体任せではなく、国の責任で無償化すべき」と話すのは千葉工業大学准教授(教育行政学)の福嶋尚子さんです。

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