おすすめポイント

「おぉう……」と小さなうめき声をあげ、よろりと壁によりかかって、「もうダメだ……」と悲しげにつぶやく。「いったい、どこにいってしまったの。さすらいのカルテット……」とショックを隠せないりすねえさんですが、その嘆きぶりがなんだかおもしろいのです。友達のエナガに、ちゃんと探したのかと聞かれ、りすねえさんが返した答えは「くまなく」と「ぬかりなく」。ちょっぴり古風で、味わいのある日本語があちこちに散らばり、物語のあたたかさを引き立てます。

『りすねえさんのさがしもの』(大久保雨咲 作/かじりみな子 絵/光村図書出版 刊)

 実は小さい頃はこわがりで、よくおばあちゃんのケープコートの中に隠れていた、りすねえさん。2つめの話「りすねえさんとおばあちゃんのケープコート」では、いとこの「りすお」と、幼いときの思い出をおしゃべりします。深い赤色で上等なケープコートを天井にむけてふわっと投げ、「それっ」とその下にまあるくしゃがみこむ気持ちといったら……。肌に触れるコートのやわらかさまで感じられそう。

 りすねえさんのふわふわのしっぽや、お茶の道具、部屋のインテリアや植物など、鉛筆で細かく描き込まれた挿絵にわくわくします。なんでもない日々のエピソードだけれど、五感を刺激されるお話ばかりです。

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