中学受験で大切なのは、何のための受験なのかという「受験軸」だと、教育ジャーナリストの中曽根陽子さんは指摘します。親子ともに軸がないまま中学受験をすると、その後にどんな影響があるのでしょうか。中曽根さんの著書『<中学受験>親子で勝ちとる最高の合格』(青春出版社)から、受験後に同じ学校に通った2人の対照的な「入学後」の例を紹介します。

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「こんな学校しか行けなかった」を引きずり成績も低迷

 受験軸があるかないかで、中学受験は大きく変わります。そのことを端的に表す事例を紹介しましょう。

 同じ学校に通うことになったA君と、B君の例です。

 A君は父親の強い希望で、3年生から進学塾に通い出し、上位クラスをしばらくキープするほど優秀な成績でした。

 両親はこれなら難関校も狙えるのではないかと期待していたのですが、学年が上がるにつれて成績が伸び悩むように。深夜まで親がつきっきりで勉強をさせていましたが、思うように成績が上がらず、家庭の雰囲気も殺伐としていきました。

 最終的には塾のアドバイスもあって第一志望校を変え、さらに、その年に開校した学校を滑り止めにして受験に臨んだのです。

 しかし、残念ながら第一志望校には届かず、予想偏差値では安全校のはずだった併願校も、受験生が殺到し合格者を絞ったことから、まさかの不合格に。

 急遽出願した偏差値40台の男子校に合格し、そこに通うことになりました。

 でもその学校はそれまで考えたこともなく、受験日に初めて訪れた学校だったのです。

 この結果に納得できない父親が「こんな低偏差値校に行くために何年も塾に通わせたわけじゃない」と、A君の前で塾への不満を口にするようになってしまいます。夫婦関係にもヒビが入り、母親も憔悴しきっていました。

 そんな親の様子から、何かを感じていたのでしょう。A君自身も、「こんな学校しか行けなかった」という気持ちをいつまでも引きずってしまい、入学後、周りを馬鹿にするような言動をして友達関係でつまずいたことから、やる気を失ってしまいました。

次のページへ一方、B君は…?
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中曽根陽子
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