おすすめポイント

 大人でもままならない「怒り」の感情との上手な向き合い方を、楽しいおはなしを通して伝えてくれる作品です。「怒り」というと否定的なイメージがありますが、「プンスカ」と表現するとなんだかかわいらしく思えてくるのが不思議なところ。プンスカを煮詰めて美味しいジャムにしてしまうという発想も奇想天外でおもしろく、すべての見開きにくりはらたかしさんによる表情豊かで生き生きとした挿絵が入っているので、おはなしの世界にぐいぐい入り込んでいけます。

『プンスカジャム』(福音館書店)より

 自分の中で沸き立つプンスカは、一体どこからやってきたのか。あぐりさんが魔法で取り出してくれたプンスカを鍋でクツクツ煮詰めながら、その原因と理由を自問自答するハルくん。さっきまでは、口をへの字に曲げて力まかせに足踏みすることでしか、やり場のない怒りを放つことができなかったのに、あぐりさんのサポートのおかげで冷静に怒りの感情を見つめ、解きほぐしていきます。

 怒りの感情と向き合う術を知っていれば、家族や友だちなどの身近な人が感情に振り回されてしまっているとき、「どうして、そんな気持ちになっちゃったのかな?」と想像することもできるはず。時にはママ・パパも「プンスカジャムを作ってもいい?」と、お子さんに言ってみるのもいいかもしれません。お子さんがあぐりさん側に立ってみることで、他の人の気持ちに寄り添うことのやさしさも知ることができるでしょう。

 本作は、詩歌や小説、エッセイなど幅広い執筆活動をしている作家、くどうれいんさんによるはじめての童話。「まんつ まんつ ねまれのす!」と、あぐりさんが唱える魔法の呪文には、くどうさんの出身地である岩手の方言もまじっていて新鮮な響き! くどうさんならではの豊かな言葉の表現が楽しめるのも、本作の魅力のひとつです。

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