この前提となるのが、1980~90年代にかけて広がった「胎児プログラミング仮説」です。低出生体重児はエネルギーをため込む体質になり、将来メタボリックシンドロームになりやすいという仮説で、赤ちゃんを産んだお母さんが自分を責めてしまうことが少なくありませんでした。また、その後の調査で当てはまらない例も多く見られたため、胎児プログラミング仮説は下火になっていきました。

 それに対しDOHaD仮説は、幼いころの環境が将来の健康に影響を与えるとしながらも、食事や生活習慣を見直すことで、良い方向に変えられる可能性があるとしています。生まれつきだからと諦めるのではなく、ポジティブな発想なんですよね。この仮説を検証するために、世界中で大規模な研究が進められています。もしこの仮説が正しければ、子どもの健康を将来にわたって守る方法が見つかるかもしれません。

(構成/越膳綾子)

※1 Wu WL, Adame MD, Liou CW, Barlow JT, Lai TT, Sharon G, Schretter CE, Needham BD, Wang MI, Tang W, Ousey J, Lin YY, Yao TH, Abdel-Haq R, Beadle K, Gradinaru V, Ismagilov RF, Mazmanian SK. Microbiota regulate social behaviour via stress response neurons in the brain. Nature. 2021 Jul;595(7867):409-414. doi: 10.1038/s41586-021-03669-y. Epub 2021 Jun 30. PMID: 34194038; PMCID: PMC8346519.
※2 Saghafian F, Hajishafiee M, Rouhani P, Saneei P. Dietary fiber intake, depression, and anxiety: a systematic review and meta-analysis of epidemiologic studies. Nutr Neurosci. 2023 Feb;26(2):108-126. doi: 10.1080/1028415X.2021.2020403. Epub 2022 Jan 4. PMID: 36692989.
※3 Fujiwara A, Murakami K, Asakura K, Uechi K, Sugimoto M, Wang HC, Masayasu S, Sasaki S. Estimation of Starch and Sugar Intake in a Japanese Population Based on a Newly Developed Food Composition Database. Nutrients. 2018 Oct 10;10(10):1474. doi: 10.3390/nu10101474. PMID: 30309012; PMCID: PMC6213530.
※4 Developmental Origins of Health and Disease

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越膳綾子
ライター 越膳綾子
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