また、親子ともに「ギリギリの成績で入学した場合、純粋に美術だけを楽しむのは難しい、成績に余裕を持った状態で入学したい」という気持ちで一致していたため、成績が伸びていっても、慢心することはありませんでした。実際、第1回目の試験で合格し、その後チャレンジ校を受けることもなく、彼女の中学受験は終了しました。自分を甘やかすことなく勉強を続け、第1志望に合格し、納得して終える。ある意味、中学受験の理想型の一つだと感じました。

中高6年間で打ち込んだものが確かであれば、将来は開けてくる

――第1志望がブレなかったのはなぜでしょう。

 女子美術大付属中では、体験学習として小学生が実際に同校で絵を描く機会があるため、近い将来の自分をイメージできたこと、また美術の奥深さや楽しさを肌で感じることができたことが大きかったと思います。僕も塾向けの説明会で授業を見学したことがありますが、在校生の多くは「美術の時間が一番楽しい」と口にしていて、そうした空気は教室中にあふれていました。

「美大に進んだ場合、就職先の選択肢が狭まるのでは」と本人や親御さんが不安に思っていた時期もあります。ですが、就職のことばかり考えて学校を選んでは中高生活を楽しめないし、6年間で打ち込んだものが確かなものであれば、将来はおのずと開けてくるはず、と彼女には伝えました。そもそも、中高や大学で学んだことが仕事に直結している人は少ないわけですから、素直に「やってみたい」と思うことに取り組んでほしい。そのうえで、「美術に関わる仕事をしたい」と思えばその道を目指せばいいし、方向転換したければその時に考えればいい、と伝えました。最近は、美大や芸術系の学部を卒業した生徒を高く評価する企業が増えているとも聞きます。

――いまはどんな毎日を送っているのでしょう。

 まだ在学中で、成績が下がることもなく、常に上位にいるようです。美術と関係ない部活に入るなど、美術以外にも好きなことが見つかった。時々、自身が手がけた絵や作品をデータで送ってくれたり、見せに来てくれたりしますが、入学した頃に比べ、はるかにレベルアップしたことが素人目にもわかります。

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