仕事に子育てに家事に、日々分刻みのスケジュールでやりくりをしている、日本の働く親たち。2019年に「働き方改革関連法」が施行されて以来、大企業を中心に、フレキシブルな勤務形態や残業削減といった試みがなされ、仕事と子育ての両立がしやすくなるのでは、と期待されました。しかし、実際は、産休・育休制度をすべて使い切れなかったり、残業や休日出勤がやむを得なかったりするという声も。「スウェーデンでは育休、有休は全部取得するのが当然の権利。残業もほとんどありません」というのは、10年前に家族でスウェーデンに移り住んだ、翻訳家の久山葉子さんです。日本とスウェーデン、働く親を取り巻く子育ての環境や社会はどう違うのか、聞きました。

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「労働時間が長すぎる!」一家で、スウェーデンに移住した理由とは?

――お子さんが保育園児だった2010年に、家族でスウェーデンに移住されたとのこと。なぜスウェーデンに?

 日本に住んでいたころは夫はスウェーデンに本社をもつ会社の日本支社で働いていて、私は大使館に勤めていました。忙しいながらも充実した毎日を送っていて、私は仕事が大好き。移住したいなんて、まったく思っていませんでした。

 ただ、娘が生まれてみると、やっぱり、共働きで子どもを育てるのはすごく大変で……。夫はすごく協力的な人ですが、外資系企業でも、日本では男性が遅くまで残業するのが普通で、通勤時間も入れると帰宅は早くても21時。その間、私はずっとワンオペで、育休が明けて仕事復帰後も、早く帰って夕食を作ったり、子どもの世話をしたりしていました。やっぱりそれが、“女性の仕事”、だったんですよね。もう本当に大変だけど、しかたがないと思っている部分がありました。

 でも夫が、「家族で一緒に過ごせる時間がこんなにも少ないのは、やっぱりおかしい」と言い出したんです。

――パートナーが、問題提起をしてくれたんですね。

 夫は日本人ですが、イタリアのローマで育っていて、夕方になるとみんなで一緒にごはんを食べて、ゆっくり家族で団欒(だんらん)するのが当たり前という環境に育ちました。だから、日本のように残業がとても多く、特に父親が子育てにほとんど時間がとれないような暮らしはおかしい、と感じたようです。

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玉居子泰子
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