スウェーデンの人は、家事も手を抜くところは抜く。わが家も夫の帰宅後、早々に夕食をすませて、じゃあ、家族でこれから何をしようかと。芝刈りや家の手入れをすることもあり、家族みんなで過ごしています。

大人も5週間の夏休み!? 代理で働く人には昇進のチャンスも

――休暇を取ったり、早めに退社したりすることが後ろめたくないのがいいですね。

 そうですね。スウェーデンでは、年間25日つまり毎年5週間の長期休みが取れる会社が多いです。制度を利用することは、当然の権利と考えられていて、子どもの夏休みに合わせて5週間連続で休むという人も、珍しくありません。日本のように遠慮をして有休を取らないという考え方ではなく、一日も残さず取るのが一般的です。

――それだけ長期間休む人が出ると、会社にいるほかの人の負担は増えませんか?

 夏休みや育休など長期休みの人が出るときは、「ヴィカリエ」と呼ばれる代理のスタッフを会社が雇ってくれるシステムがあります。ですから、同僚に仕事のしわ寄せがすべていくということは、あまりありません。

 この「ヴィカリエ」のシステムは、経験が浅い若手人材や、今よりも高いポジションにつきたいと考えている人にとって、良いチャンスでもあるんです。管理職など責任のあるポジションも含めて人が休む場合、募集がかかります。そこで経験を積み、認められれば、「ヴィカリエ」が終わった後も、希望する職種につける可能性が高まるんです。

――なるほど。休暇の穴埋めをするだけでなく、昇進や新しい職の道を切り開くチャンスになるんですね。

 ええ、たとえば社長や校長が休むときはその代理が募集されます。育休を含め、休むことは働く人の権利であり、ほかの人にとってもメリットがある、というしくみになっています。

 ほかにも夏休みの時期には自治体が積極的に中学生や高校生を「夏のアルバイト」に雇います。自治体管轄の土地の芝刈りやアウトドア施設のカフェのレジ、介護施設でお年寄りの介護など、若者の職業体験にもなり、普段その仕事をやっている大人は休めるようになっています。

――手厚い制度があって、うらやましいです。

 そうですね。でも日本でも制度自体はちゃんと整っているはずです。入社6カ月後には10日の有給休暇が出て、最高20日の有給休暇が与えられる。そのうち5日は必ず取得する義務がありますね。これは世界的にみてもそんなに悪くないと思います。

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