都内で中学受験塾「應修会」を主宰する茂山起龍(きりゅう)さんは、受験後も教え子たちと交流を続けるなかで、中学受験生たちの“その後”を見つめ続けています。AERA with Kids+の連載「中学受験、その先に」。今回は、母と子の二人三脚で受験を乗り越え、夢に向かって歩む男子生徒のエピソードを紹介します。
【マンガ】中学受験で「偏差値の高い学校」への思いを捨てきれなかった母が、「路線変更」を決断して“わかった”こととは「将来、お母さんに楽をさせてあげたい」
――家族のあり方が多様化しているいま、シングルマザー、シングルファザーとして中学受験に臨むケースも増えています。
塾の一期生にも、シングルで育てているお母様とともに受験勉強に励んでいた男子生徒がいました。彼が僕の塾にやってきたのは、小学6年の夏。他塾に通っていましたが、母親と祖母と三人暮らしを始めるにあたり引越しをし、僕の塾にやってきました。もともとコツコツ前向きに勉強をする生徒でしたが、決して裕福ではない、という家庭環境は本人もよくわかっていたようです。「将来、お母さんに楽をさせてあげたい」と常々、口にしていました。
家庭内に中学受験経験者がいないなか、お母様が段取りを考え、まさに二人三脚で歩んでいました。手探りながら懸命にサポートをしてくれる親の姿を間近で見ていたため、子どもながらに「なんとか母に恩返しをしたい」という気持ちが強かったようです。お母様の仕事の都合で合格発表を見に行けない日は、僕が彼と一緒に発表を見に行きました。
――結果はどうでしたか?
第1志望には手が届きませんでした。その際も「母に対して申し訳ない」という気持ちがあったようです。お母様は明るく前向きな方だったので、気落ちすることはなかったようですが、本人は埼玉・千葉の前受け校ではすべて合格を手にしていたため、「なぜダメだったのか」と絶望的な気持ちになった、と後になって聞きました。最終的に、試験日の後半のスケジュールで受験した学校に合格し、進学を決めました。25歳となったいまは、「第1志望にこだわる必要なんてなかった」と言っていますね。
次のページへ第1志望にこだわる必要はないと思えた理由は?