2019年のデビュー作『パンツさん』で日本絵本賞を受賞し、以降もMOE絵本屋さん大賞など名だたる絵本賞に次々と入賞を果たしている絵本作家・たなかひかるさん。その活動範囲は幅広く、X、Instagramではフォロワー約60万人を誇るギャグ漫画家として、さらには、M-1グランプリで準決勝に進出した芸人としての顔も持っています。大学中退後、漫才の世界を経て絵本を描くに至った経緯や、「頭がよくならない絵本」「意味のない絵本」と自らが語るシュールな作風の背景を聞きました。※<後編>「足の伸びたコアラ」に「走るお寿司」 絵本作家・たなかひかるの世界「“気持ち悪い”の手前にある“面白さ”にこだわりたい」へ続く
【絵本】たなかひかるさんの『そそそそ』を途中まで読む!(全14枚)大学の芸術学部を中退し吉本興業の養成所に
――たなかさんは芸人、漫画家、絵本作家とマルチな才能を発揮されています。昔から絵本制作には興味があったのでしょうか?
特に絵本作家を目指していたわけではないのですが、物心ついたときから絵を描くことや工作が好きで「将来は多分、絵を描いたりして生きていくんだろうな」とは考えていました。子どものころは、絵本や漫画もよく読みましたよ。両親が小学校の教員をしていた関係もあってか、家には絵本や本、漫画も含めてとにかく書物がたくさんありました。
――大学在学中、芸人の道に進むことを決断された理由はなんでしょうか?
お笑いも子どものころから大好きで、父親の運転する車の中ではいつも落語を聞いていましたし、中学時代には、千原兄弟さん、ケンドーコバヤシさん、野性爆弾さんなどが出演されていた深夜番組を見ていました。
大学は芸術学部に進み版画を専攻しましたが、どこかお笑いの仕事にも興味があったんでしょうね。あるとき「美術の勉強や作品作りは今じゃなくてもできることなんじゃないか?」と思うようになったんです。版画や絵は歳を取ってから趣味としてもできますけど、60代、70代から趣味で漫才を始めるのって、キツいですよね(笑)? だったら先にお笑いをやっておこうということで、大学を中退し、NSC(吉本興業の芸人養成所)に入りました。
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