自身いわく、「頭がよくならない絵本」「意味のない絵本」を描き続ける絵本作家、たなかひかるさん。芸人、漫画家としてのキャリアも持つたなかさんにとって、絵本は「面白い」ことを表現する場の一つだといいます。作品作りの中で大切にしていることや今年2月に出版された『そそそそ』の制作エピソードや、読み聞かせのポイントについて教えてもらいました。※<前編>『M-1』準決勝進出芸人が、人気絵本作家になった“軌跡”とは? たなかひかるが語る「面白いこと」の見つけ方から続く

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タイトルの印字に隠された秘密とは……?

――『そそそそ』、拝見しました。タイトルもすごくユニークですね。

 響きがいいものにしたいと思って、このタイトルに決めました。作品には足が長く伸びたコアラが登場するんですが、『そそそそ』はそのコアラの足が地面に接地したときの軽い音をイメージしています。あくまでも想像ですが、多分「ズシン」という感じではなくて、どこにも力が入っていない感じで「そそそそ」といくような気がするんですよね。

 ――表紙に印刷された黒字のタイトル、よく見ると両隣に無色で「そ」の字が印刷されています。

 そうそう、あれはデザイナーさんの案です。ああすると、どこからともなく始まって、いつまでも終わらずにそそそそそ……と続く感じが出るんじゃないか、って。絵本を作る上でのデザイナーさんの力は、すごく大きいですね。僕は下書きの段階から何度もデザイナーさんに相談して、色のバランスとか明るさなどについても、アドバイスをもらっています。

読者を驚かす手法は ホラー映画から学ぶことも

――色味ひとつで、絵の印象は大きく変わりますね。

 自分が面白いと思う発想の部分は守りつつ、伝え方や表現の仕方については、いろいろな方の意見を取り入れることが大事だと思います。特に僕の作品は、色味が暗いと不気味になりすぎますからね。コアラの足が伸びるなんていうあり得ない世界、よく考えるとホラーでしょう(笑)? 実際、見る側をどうやって驚かせるか、どうやって予想を裏切るかを考える場面では、ホラー映画の手法を参考にすることもあります。

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木下昌子
木下昌子
NEXTキャラクターを描く上でのこだわり
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