日本の学校で先生があまり議論をしないのは、時間厳守という理由もあるのかもしれない。45分授業の中でめいめい自分の意見を言って収拾がつかなくなったら困るからだ。子どもたちも、本当は意見を言いたいけれどもう3人がしゃべったからやめておこうとするかもしれない。時間を意識しすぎて、発言が制限されてしまう。

 学校と社会は、別世界ではない。フランスの社会は時間どおりに物事が進むことをあまり重視していない。学校の授業も多少ずれこんでもいいと考えている。時間を守るのはよいことだが、デメリットがないわけではないのだ。

「5分遅れてもいいよ」

 先生がこんなふうに言えば、子どもたちはもっとのびのびと表現できるかもしれないのだから。

フランス人記者、日本の学校に驚く

西村カリン

フランス人記者、日本の学校に驚く
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西村カリン
西村カリン

1970年フランス生まれ。ラジオ局やテレビ局を経て、1997年に来日。AFP通信東京特派員となり、現在は「ラジオ・フランス」および日刊リベラシオン紙の特派員。著書に『不便でも気にしないフランス人、便利なのに不安な日本人』(大和書房)など。

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