フランスでは「大人だから正しい」という考え方はない

 安心・安全・安定を目指してリスクをとらないことが、今の日本の大きな問題だとわたしは思う。学校の先生はあまり自由がないため、決まった教え方で教えることになり、自分らしい教え方をするとクレームが入るリスクがある。そのリスクをとれない環境になっている。また、上下関係を気にしすぎる社会でもある。

 大人だから正しい、先輩だから正しい、といった考え方が日本にはまだ根強くある(改善されつつあるようだが)。学校では「先生だから正しい」とされている。授業では先生からの一方的な話が多いため、先生が言うことは正しいという前提がなければ始まらないほどだ。でも、必ずしも先生が正しいとは限らない、と子どもも理解しておく必要がある。

「ん? 先生の言っていることおかしいな」

 こう思っても、子どもは怖くて言えないかもしれない。もし子どもが指摘したら、なかには反発されたと感じ、不機嫌になる先生もいるかもしれない。だからこそ、「言いたいことがあれば言っていいよ」という環境を先生が率先して作ることが大切だ。

 フランスでは、大人だから正しいという考え方はない。子どもは自分の意見を大人に言える。「あなたの言っていることはおかしいです」と直接ぶつけてもいい。子どものほうが強いケースもあり、必ずしもよい見本になるわけではないが、先生と生徒の間に議論があるのは望ましいことだ。先生はきちんと根拠まで言わないといけないと思っている子もいる。

 また先生も、違う意見が出てきたら「なぜそう思いますか?」と必ず子どもに問う。反対意見があればあるほど議論がおもしろくなると考えている先生も多い。むしろ先生が言ったとおりの意見しか出てこなければつまらないと考えている。日本では「先生の言うことを聞く子」はいい子とされるが、それでよいのだろうか。

「5分遅れてもいいよ」でもっと表現が学べるかも

 ただ、じつはフランスでもすべての学校ではないが、最近は少し事情が変わってきたようだ。子どもたちの人種も文化も多様になり、意見にも多様性が生まれ、時に議論がケンカにつながってしまう。親からクレームが出てくるのではないか、と議論することに抵抗のある先生も出てきたという。

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