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入試の数学と「中学受験算数」は違う

安浪:私は公文をずっとやっていて、小学校のときに教材もどんどん進んだんです。だから中高になって数学はすごく得意でした。ただ、大学生になって大手進学塾に算数講師として入ったときに、鶴亀算とか速さ、数の概念、数量などの分野が弱いことに気づいたんです。つまり公文の教材って大学入試の数学が解けるように棚卸されて教材が作られているから、数を量として見ないで、数字として処理するんです。入試で必要とされる数学はそういう世界ですが、中学受験算数は違うんですよね。数字の大きさ、量をイメージする必要があるんです。

矢萩:なるほど。数を量的に考えられることは、地頭の良さにも通じますから悩ましいところですね。

安浪:あと、そろばんは道場的な良さもありますね。先生にちゃんと挨拶をするとか、「願いましては」で一斉にやるとか。そろばんって、しつけ的なことも求められるところがあります。

矢萩:今思いついたのですが……2桁の四則演算まで公文でやって、そこから公文を一旦止めてそろばんやって、そろばんで3桁の暗算ができるようになったら公文に戻るっていうやり方をするはどうだろう。基本的な算数の解き方の法則や公文的な整数の四則演算をわかったうえで、計算が遅いと大変だな、ということを実感する。そのうえでそろばんをやると、暗算ができるようになって計算をするのが楽になる。3桁ぐらいの暗算がぱっとそろばんでできるようになったら、そろばんは卒業して公文に戻って小数や分数の計算をやっていく。これを小学校4年生ぐらいまでやってから中学受験に移行すると、効率的にいけるんじゃないかなって気がしますね。

安浪:先ほどもお話したように、私自身も小4のときにそろばん教室に入ったんです。算数の授業でそろばんがあった時にできなかったのがショックで。それで1年足らずで有段者になったんですが、最初のうちはそろばん教室で怒られてばかりでした。公文で計算をやり込んでいるから、暗算が頭の中でできちゃうんです。結局、そろばんも上のほうの段まで行ったけれど、そろばんのやり方を今はすっかり忘れてしまいました。中学高校で扱う数学は紙と鉛筆の世界だから公文的なんですよね。だからそろばん教室でそろばん的な暗算もやったけれど、その後も私はずっと公文的に暗算をしていました。

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