彼は100点のテストですら一度も「お母さん! 見てみてー!!」と出してきたことがありません。小学生の頃に理由を聞いたら答えは「自慢みたいで嫌だから」。いやいや親にはいくらでも自慢していいんだよ、親は子どもの自慢を聞きたいんだよぉぉ!!と力説したものの怪訝な顔をされて終了。

 先日提出物の中に100点の漢字テストが紛れていたので、中1にもう一度同じ質問をしてみました。すると

「親には……なんか親にはほめられたくないんだ!」

 あ。それはわかる気がするぞ。

 思春期コミュニティでの「評価=モテる」というわかりやすい特技、つまり足が速いとかサッカーが上手いとか、いわゆる強者男性のポイントを持たざる中1男子的には、学校という客観的な場で評価を得られないのに、親みたいなほぼ主観の存在からほめてもらえるという状況が屈辱なんです。

「失敗しても、ありのままの自分を認め、受け入れてくれる安心感」

 自己肯定感を高める育児の本に、親のあるべき姿はだいたいこう書かれています。でも思春期に入り世界が広がるにつれ、親が無条件に受け入れるだけではダメみたい。自己肯定感って子どものうちでも親だけで高めるのは無理なんだなーと戸惑いつつ、実感する今日この頃。

 そんな最中、夫が面白い本を共有してくれました。

『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』(金間大介/著 東洋経済新報社)

 40代、会社では中間管理職として日々20〜30代を中心とした部下を持ちコミュニケーションをとっていると、やっぱり20代、いわゆるZ世代といわれる若者たちとの価値観の相違に頭を抱えることが多いので、その心理を理解したいと手に取ったそうです。

 大学生を含む現代の若者たちの傾向を、筆者は「いい子症候群」と呼んでいます。真面目で素直で感じの良い“塊”として見られたい。良くも悪くも目立つ行動はしたくない。集団の中で浮きたくない。良い行動であっても自分がそうせざるを得ない外的要因を求める(フードロスになるから食べてほしい、など)。だから指示待ちになり、意思決定を避けがち。傷つきやすく、失敗体験を過度に恐れる。

次のページへゾッとするほど圧倒的な自信のなさ
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