中学受験で塾通いする子どもたちも、概日リズムに問題が起こる可能性があります。特に注意してもらいたいのが食事の時間です。塾から帰ってきて、遅い時間に夜食を食べるのはよくありません。胃の中に食べ物が入ると、覚醒反応が起きてしまいます。夕飯は塾に行く前か、塾の途中にとり、なるべくいつもと同じ時間にすることが大事です。夜遅い食事は、朝起きられない原因につながります。
睡眠不足の蓄積で、脳の働きと知能が低下する
――睡眠不足が続くと脳や体に影響がありますか?
夜ふかし・遅寝が続き、体内時計が遅いほうへとシフトして、寝つきの悪さが起こると、朝の起床時刻は変わらないので睡眠欠乏状態になります。すると、睡眠によって保たれていた脳のシナプスや神経細胞の動き(情報処理能力)が低下します。情報処理能力の低下は自律神経機能の中枢でもある脳の視床周辺でも起きるので、覚醒しても不快さが持続したり、日中にも眠気が残ったりするので、イライラしたり、学習への意欲の低下が起きます。
不登校児の脳血流画像検査を行うと、明らかに脳の血流量が少ないことがわかりました。脳代謝異常もみられ、前頭葉を中心に、脳が混乱して、働ける量が減っている状態です。認知機能や記憶力が落ちてしまいます。IQでいえば、15〜20くらい落ちてしまうのです。逆に、睡眠時間が長い子どもは、記憶をつかさどる脳の海馬が大きいという研究結果※があります。睡眠が脳を成長させ、脳の働きをよくすることに大きな貢献をしているのです。
慢性的な睡眠欠乏状態が続くと、エネルギー生産工場であるミトコンドリアの機能を低下させることが知られており、生命力そのものが低下します。持久力がなく疲れやすく、1日の生活が満足に送れなくなってしまいます。結果として、社会生活から離脱せざるを得ない状況です。これが、近年「体内時計混乱」(Chronodisruption)として認識され始めた(かつては小児慢性疲労症候群とされていた)不登校の子どもたちの状態だといえます。
なんとなく不調で普通の病院に行っても、特に異常がないといわれたり、せいぜい自律神経失調症や起立性調節障害といわれるくらいで、細かい検査まではしてもらえません。検査をすれば異常は明らかなはずで、深刻な睡眠障害や体内時計混乱(小児慢性疲労症候群)の可能性もあります。しかし、それを知らない医師のほうが多いのが現状です。
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