睡眠障害につながりやすい7つのきっかけ

――平日の睡眠時間は短くても、休日に寝だめをすれば大丈夫ですか?

 それは貯金的な意味の「寝だめ」ではなく、平日の睡眠不足による負債の「穴埋め」です。寝だめは疲労回復に一役買っている面はありますが、それは概日リズムが狂う原因になります。夜ふかし・遅寝のがんばりを続けていると、体内時計のリズムに狂いが生じ、睡眠-覚醒リズム、ホルモン分泌、体温調節、自律神経など重要な生体リズムを混乱させる 不健康の土台を作ることになってしまいます。

 私の研究では、その不健康の土台に次の7つの出来事が1つでも、2つでも上乗せされると、それがきっかけで概日リズム睡眠障害を起こすおそれがあるのです。

1) 重圧となる責任を負わされる(クラブ活動のキャプテンや代表になるなど)

2) 受験勉強、連日のお稽古、部活動での試合前の休みのないハードな練習

3) 家庭環境の変化(両親の離婚、転職など)

4) 人間関係のトラブル(いじめ、友人関係、家族・親子関係、教師との関係)

5) スマートフォン、ゲーム、テレビ、パソコンなどの過剰使用

6) 感染症での発熱、消耗

7) 交通事故や地震などの自然災害

 大人も子どもも社会全体が遅寝になっているのに、学校や会社が始まる時間は昔のままで、現代社会は睡眠欠乏や不登校を助長する社会構造になっています。真面目でがんばる子ほどこうした睡眠障害になる危険性があるのです。東大や偏差値の高い学校をもてはやす風潮がありますが、無理をさせて健康を害したり、家族不和になってしまったケースをたくさん見てきました。しかも、それを治すには長い時間が必要になり、進路を左右する10代後半の大切な時間をそれに充てなければなりません。受験をする人を止めることはできませんが、せめて、睡眠時間を削らないように努力してほしいです。入眠時刻がどうしても夜9時半から10時過ぎになるご家庭では、週に1、2日はご家族全員が夜7時から8時に眠る日を作る、あるいは、昼寝の時間を10分程度取るなどの対策をしていただきたいです。

中学受験をして本当によかったのか?~10年後に後悔しない親の心得

小山 美香

中学受験をして本当によかったのか?~10年後に後悔しない親の心得
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小山美香
小山美香

大学時代よりフリーライターとして活動を始める。大学卒業後は「サンデー毎日」(毎日新聞社=現・毎日新聞出版)の編集記者として、多岐にわたって取材・執筆。その後フリーランスに転身。「本と出会う」(BS-i=現・BS-TBS)のキャスター、タウン誌記者などを経て、読売新聞オンラインの「中学受験サポート」で、のべ160校以上の私立中学校高等学校を取材している。また、中学受験だけでなく、通信制高校や子ども食堂など、子どもをめぐるさまざまな事象についても、週刊誌やニュースサイトに寄稿している。プライベートでは3児の母として3度の中学受験を経験。趣味はガーデニング。

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