都立高校の出口の変化
2024年度、都立高校のエース校である日比谷高校は東京大学に60 人(現役52 人)が合格しました。都内の中高一貫校でこれを上回る現役合格を輩出するのは、開成、筑波大学附属駒場の2校だけ(2校とも高校募集あり)です。都立高校では、西や国立、戸山も2ケタの合格が出ています。「中学受験をしないと東大には届かない」と言われていた状況は変わりつつあります。 東大合格者数のランキングばかりが注目されますが、東京外国語大、東京農工大、東京都立大、東京海洋大、電気通信大、東京工業大、一橋大といった首都圏の国公立大学は、高校受験ルートが主流です。
国公立大学への進学率は中高一貫校と比べても遜色ありません(表2参照)。特に理系ルートは学費の負担が大変重いため、国公立大学を望む家庭が多いようです。私の教え子の理系生も、たいていは国公立大学にこだわって受験しています。国公立大学というカテゴリで大学進学力を測ると、高校受験ルートの大学進学力の高さは侮れません。
表3は重複合格を除いた3番手系都立高校の実際の現役進学者数です。3 番手系の都立高校では約半数が国公立大学+早稲田大+慶應大+上智大・東京理科大+ MARCHへ進学します。2000年代に始まった都立高校の大学進学率の復活は3番手系の都立高校の躍進による貢献が顕著です。藤沢数希氏の『コスパで考える学歴攻略法』(新潮新書)によれば、中学受験のトップランナーが集まるSAPIX小学部の大学進学の中央値がMARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)と推定されるそうです。SAPIX小学部で真ん中の成績を維持することの困難さを考えると、高校受験で英語を鍛え、地元の3番手系の都立高校へ進学し、高校生活で目いっぱい青春をして、MARCHレベルの大学を目指すほうがハードルが低いように思います。
3番手系の都立高校は、旧制中学や高等女学校の歴史を持つ伝統校が多く、母校に愛校心を抱く在校生・卒業生が多いです。次世代リーダー育成道場を利用した海外留学も盛んですし、科学技術系の学校もあります。東大に到達する確率は中学受験のほうが高いでしょうが、普通の成績のお子さんにこそ、3番手系の都立高校を目指してほしいと思います。
東京高校受験主義(東田高志)