それと、身体感覚をよく使うお子さんは「味覚」への反応が鋭いことが多いんです。「味わう=体を使う」ことなので。きっとこの子は、お菓子を見た瞬間に頭の中でその味が再現されていると想像します。考えるよりも体がすぐに動くタイプでしょうから、気がついたら食べてしまっているのでしょう。

子どものウソ、そこにはどんな心理が?

――お母さんに「知らない」とウソをついた、とありますが。

 これはだまそうとしているのではなく「なかったことにしたい」のではないでしょうか? きっと本人も困っているんだと思います。おそらく、半分くらい食べたところで「やっちゃった!」と気づき、手に残った包み紙をどうしようとうろうろして、自分から見えなくなるテレビの後ろに置いた……。そんなふうに想像できます。

 今回のお子さんが言っていることを「ウソ」ととらえるかどうかですよね。この場合はまず、いい悪いは置いておいて、「食べちゃったね」と、お子さんのその瞬間の心の動きをそのまま共有してあげるのはどうでしょうか。すると、お子さんも「やっちゃった」とまでは言えると思います。そのうえで今後はどうするか相談する。この子は人との関わりを好むタイプだと思われるので、「黙って食べたらお母さんは悲しいから、やめてね」と伝えて、お子さんがお菓子にぱっと手を出したときに親御さんの寂しそうな顔が連想されるように記憶に結びつけておいてあげると、一定の制御はしやすくなってくると思います。

 ただ、それも100%ではないので「またやっちゃったら教えてね。その時はお菓子を手の届かない場所に移動しようか」と対応策を伝えておく。「パパやママに嫌われちゃうかな、がっかりさせるかな」と、自分がどう思われるかが気になるかもしれないので、やっちゃった後はこうするという対応策を伝えておき、その不安を和らげてあげる。「約束を破ったのはよくないけど、やってしまったことは報告してね。隠して、なかったことにするのは寂しいからやめようね」と伝えて、隠さなくてすむように練習していってあげると、だいぶ状況が変わるのではないでしょうか。

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