偏差値重視から校風重視に変更! 娘の“本当の志望校”が決まる
わが子が「心から通いたい」と思える学校を第1志望にしようと決意を固め、まず見学に行ったのは、のちの進学先となるA中学校でした。勉強も部活も熱心に取り組む大学附属校で、中学受験の時点では偏差値50前後でありながらも、高校・大学では難関校として知られる学校。生徒主導で学校行事を運営するといった校風も娘好みだろうと、母親の私はうすうす感じていましたが、「娘が一度その魅力を知ってしまうと、偏差値の高い当時の第1志望校への受験意欲が削がれてしまう……」と恐れ、これまで見学をあえて避けていました
現地に到着すると、おどおどする私たちに声をかけて学校生活や進路について丁寧に教えてくれる高校生や、さわやかな笑顔で学校案内に励む中学生の姿が。学校説明会の前には吹奏楽部の演奏も行われ、キラキラとした笑顔で青春を目いっぱい楽しむような生徒たちの姿に、娘の目が爛々(らんらん)と輝き、「すごいね!」と興奮しきりだったことを覚えています。そして娘の口から初めて「私、絶対にここに行く! ここが第1志望!」と決意の言葉が出たことで、ようやく“本当の志望校”が確定しました。
いつのまにか娘は母の手をはなれ、自立に向かって歩んでいた
娘主導の中学受験が始まってからは、母の私は、娘の好物をつくってテンションをあげるなどメンタルのサポートと体調管理のみに徹しました。娘が志望校合格に向けて前向きに勉強を重ねた結果、なんとかA中学校とのご縁をいただくことができました。後日、娘は私にこう言いました。
「ママ、吹奏楽部の演奏を聞いて、感動して泣いてたでしょ? 私もあの舞台にいつか立って、ママを感動させたいって思って頑張ったの。説明会で会ったA中学校の先生とも約束したんだ、次は私が受験生に向けて演奏するって」
娘はたくさんの試練や苦しみを乗り越えて、いつの間にか一回りも二回りも成長していたようです。その温かく力強い言葉に、わが子が自立に向けてすでに歩みを進めていることを実感しました。娘は現在、念願の吹奏楽部に入り、大舞台でソロ演奏を成功させるという夢を持ちながら毎日を全力で楽しんでいます。偏差値にこだわり続け、娘に「もっともっと」と高い目標に向かわせ続けていたら、こんな日々は来なかったでしょう。娘と私の関係も、壊れてしまっていたかもしれません。中学受験を通じて自分なりの夢をみつけ、その道を自分の手でひらいていく娘を、これからも応援していきたいと思います。
(文/東山令)