白神山地の魅力と今後の課題
白神山地は、原生的なブナ天然林が世界有数の規模で分布していることが評価された。遺産地域への立ち入りが制限されたこともあり、04年度に8万人以上だった入山者は、22年度は約1万6千人にまで減った。いくら自然の価値が高いからといって、人から遠ざけていたのでは意味がない。保護と利用の両面からあり方を考えていく必要があるだろう。
遺産地域が青森県の西目屋村など3町村、秋田県の藤里町にまたがることもあって地域での一体的な取り組みもなかなかできなかった。このため関係市町村などは11年、環白神エコツーリズム推進協議会を発足させた。地域全体で協力した白神の魅力の発信に力を入れている。
白神山地は手つかずの自然だと思われているが、縄文時代から人が暮らし、林業や鉱業が営まれてきた。江戸時代の紀行家、菅江真澄も炭焼きなど人々の営みを記録に残している。
世界自然遺産を正しく理解するには、人とのつながりを合わせて継承していくことが重要だ。屋久島では、11年から地元の語り部が歴史や文化、産業などを案内する「里のエコツアー」を実施している。白神山地も、訪れた人たちにもっと文化的、歴史的な意義を伝える必要があるだろう。