政府側はたった数百円、1000円ちょっとと思ったかもしれません。しかし、それだけで節約志向は強まり消費は冷え込み、むしろ税収が減って財政は悪化する可能性すらあります。1997年の消費増税の際がそうでしたから。

参院予算委員会で「異次元の少子化対策」の財源をめぐる質問に答弁する岸田文雄首相

―――財源はどうすればいいとお考えですか。

 国債発行、もしくは消費増税の上振れ分の使用が考えられます。

 まず、国債。「子ども国債」を発行して少子化対策のための財源とするのです。子どもは将来、かけたお金以上に働いて税金を納めてくれます。人的資本に投資するという意味で、子ども国債を発行して良いと考えます。

「国債を発行すると借金が増える→将来世代にツケを回すことになる」という声もあるでしょうが、安心して子どもを産み育てられないような環境を将来に残すほうがよっぽど罪深いでしょう。

 それでも、「子ども国債」に抵抗があるなら、安定性の高い消費税収の上振れ分を充てるという方法があります。消費税収は2021年度の約21兆8000億円から22年度には約23兆800億円へと、1.2兆円近く伸びていますので、これを今回の財源に充てればいいのではないでしょうか。何はともあれ、経済状況が良くなってから負担増にシフトすべきでしょう。

今後結婚、子どもを考える人を後押しする政策ではない

―――異次元の少子化対策とうたっていますが、政策の内容については、いかがしょう。

 負担してもらったお金は、児童手当の拡充、育児休業給付の引き上げなどに使われる予定ですね。そもそも、これらは子どもをすでに持っている人に向けた政策です。確かに、これらの政策がなかったら子どもを増やすのを諦めていたけれど、もう一人産みたいと思うケースも出てくるかもしれない。全く効果がないとは言えません。

 ですが、これから結婚するかどうか、子どもを産むかどうか、と考えている人を後押しするような政策ではありません。そこの層に向けた政策を考えるべきでしょう。それなのに、そんな人たちにまで負担を課せば、「家計が苦しいのでやっぱり産めない」という選択をする人も出てくるでしょう。

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