最近の中学入試では、思考力や表現力を問う問題が増えています。その背景や対策方法について、「三度の飯より過去問が好き」という声の教育社の後藤和浩さんに聞きました。AERAムック『偏差値だけに頼らない 中高一貫校選び2024』(朝日新聞出版)より抜粋して紹介します。
【実際の問題】慶應湘南藤沢・東邦大東邦・横浜創英で出された問題はこちら思考力や表現力を問う問題は、中堅校でも増えている
中学入試の問題は親世代の中学、高校時代から様変わりしている。社会問題を題材にして自分の考えを問うなど、知識だけでは太刀打ちできない問題が増えてきている。
首都圏中・高入試の過去問題集、受験案内を発行している出版社・声の教育社の後藤和浩さんは、同社編集者時代に大量の入試問題を解き、解説を担当してきた。
「思考力、判断力、表現力を発揮して解くような問題は、大学入学共通テストの影響です。自分の考えを述べさせる問題は以前から難関校でよく出ていましたが、中堅校にも広がってきました」(後藤さん)
従来の教科別入試でも、算数では数式ではなく文章で出題し、その文章を読み取って答えを導くものが増えている。社会は暗記科目と思われがちだが、与えられた資料から問題点を見いだし、自分の言葉で答えるものが頻出している。
【東邦大学付属東邦中】路線図と時刻表を読み解く
後藤さんが「面白い」と思った入試問題を挙げてもらった。一つは、東邦大学付属東邦中学校・高等学校の社会だ。
「北海道の路線図と各交通機関の時刻表を見て(別図)、『友人より遅く着くが、待ち時間をできるだけ短くするためのもっとも遅い成田空港出発便』を選ばせるんです。面白いでしょう?」(後藤さん)
【慶應義塾湘南藤沢中】“極端な意見”への反論を組み立てる
慶應義塾湘南藤沢中等部の国語では、最近ネット上で目にすることも多い、極端な発言が設問になっている。
「『甘いものは体に悪いから、課税して値段を上げたほうが国民の健康につながる』という内容の発言に、160字以内で反論せよというものです。前年も、オリンピック日本チーム監督と同じ立場なら、という前提で正解が一つに定まらない問題が出ました」(後藤さん)
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