「夏休み明けは、日本の子どもにとって最も危険な時期――。苦しんでいる子どもを一人にしてはいけない。大人側に知ってほしいというメッセージでもある」

 そう呼びかけるのは、「不登校新聞」編集長の石井志昂(しこう)さんだ。石井さんが代表理事を務めるNPO法人全国不登校新聞社は7月の1カ月間、動画投稿アプリTikTok(ティックトック)上で「不登校生動画選手権」を開催。「学校に行きたくない私から学校に行きたくない君へ」をテーマに、10代の不登校経験者に1分以内の動画の投稿を募集した。

 発起人である石井さんは、この企画を開催した理由について次のように語った。

「不登校というと、何もできない、無気力で弱々しいイメージを持たれがち。しかし、当事者は悩み苦しみながら『社会をもっと良くしたい』『自分は生きていていいんだと思いたい』など、さまざまなことを考えている主体性のある存在です。私自身も中学2年のときに不登校を経験していますが、不登校の人たちが表彰される晴れ舞台を用意したかった。不登校経験者だからこそ、今悩んでいる人たちに伝えられることがあります」

 小中高生の自殺者数が昨年には500人超えの過去最多(厚労省・警察庁調べ)となるなか、夏休み明けの自殺をなんとか食い止めたいという思いもあるという。

 応募された投稿は約350本に及び、総再生数は1000万回超え(いずれも主催者発表)と、想定を大きく上回った。

 投稿された動画は、「(学校に)行っても行かなくても人生の経験値は上がる」と静かな口調で語りかけるものや、「その選択、絶対全部間違ってないよ」と力強く励ましてくれるもの、散歩している写真や風景写真をつなぎ合わせて、やさしい音楽とともに「心も体もボロボロに…そんな時は思い切って外に出てみない?」と背中を押してくれるものなどさまざまだ。

 なかには、「母親に不登校だったこと突撃して聞いてみたww」といった不登校の子を持つ親にスポットライトをあてたものも。絵を描くシーンを早送りで見せながら「ゆっくり自分にあった世界を探していこう」と伝えるもの、言葉は入れずに動物のアニメーションだけでメッセージを伝えるような作品も集まった。

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AERA with Kids編集部
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