安浪:長い夏休みは、無理やり目をつむってやり過ごしてきたものや、子どもの真の姿が、いろいろと出てくる感じですよね。親の中では6年の夏は大事って思い込みがあるし、塾からもそう言われるし、これに乗っかっていかないとダメだ、という思いがあるわけじゃないですか。それに対してわが子がその理想像からかけ離れていると焦って「ぎゃーっ」となってしまう。親の焦りはたいてい親の中にある志望校からくるものです。でも、一番大切なのは目の前の子どもが今、どのような状態・状況なのかをしっかり見ること。もし気分転換をしても難しそうなほど疲れているようなら、わが家の中学受験の目的とか、親の中の志望校というのを今ここで再考したほうがいいと思うんです。夏の今もしんどいけど、秋は今と比べものにならないぐらい、しんどくなっていくので。
子どもは案外「イヤ」と言わない
矢萩:子どもって案外、嫌って言わないんですよ。親御さんがあなたはこうするべきよ、とビジョンを決め打ちしていたりすると、やらなきゃ嫌われると思っている子たちもいます。見捨てられちゃうかもしれないとか。だからよほど無理ということでない限り、嫌だけどやってしまう、ということは多いです。そもそも自分が本当にやるべきかどうか判断することは、小学生には難しい場合がほとんどです。
安浪:ここで打ち手を間違えると、秋から塾に行かなくなる子って結構出てくるんですよ。さらには学校にも行けなくなったり、入試当日の朝に起きてこられなかったり、というケースも過去に見てきました。だからこそ早めに対応をしたほうがいいと思います。ダラダラしたわが子に対する親の沸点は夏休みの後半になればなるほど、より低くなってくるので。
矢萩:あと一言で「ダラダラしている」と見るのではなくて、ちゃんと教科や項目ごとで細かく見たほうがいいです。夏期講習ではこの教科はここまでやります、というパッケージがあると思うのですが、全部網羅しなければいけない、というのは同じカリキュラムやテキストで一斉授業や模擬テストをする塾側の都合で、実際には集中力にも波がありますし、体調不良で休むこともありますよね。苦手分野だって当然ある。大事なのは、抜けた部分や、苦手な部分を把握しておくことです。そのなかから自分の受験に必要な部分だけ、あとで補完すればいい。算数はこの単元のときは大丈夫だったけど、ここは抜けてしまったなとか、理科は物理分野のときに集中できなかったな、とか。抜けた部分は後からでも挽回はできます。
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