安浪:スケジュールも、今日は算数、明日は国語、だけだと小学生はうまく回せません。今日は算数の基本問題のうち○ページから○ページをやって、答え合わせと間違い直しまで、など、勉強の全貌を子どもと親が共有することが大事です。そのうえで「今日はどこまでできた?」というような聞き方をしていくといいですね。どこまでだったら自分でできるか確認して、ここから先は親がサポートしたほうがいいかな、とか、ここから先はもう捨てちゃおうか、と相談したり。とにかく親子で共通の認識を持っておくことが大事です。「やったの?」「見せなさい」など口を出すだけなら簡単ですが、それではうまくいかないと思います。

矢萩:そうですね。大人も同じですが、たとえ自分の不足が分かっていても、「口だけ出されている」と感じると、いっそうネガティブになります。一方的に言うんじゃなくて、親子で全体像を共有したうえで手伝ってほしいことを聞いたり、これを手伝おうか?と提案したりしていく、といった感じですよね。

■相手は小学生、ある程度の柔軟さは必要

安浪:全体像を把握するためにはテキストに目を通さないといけないので、親としてはめんどくさいんですよ。でも、実際にはテキストに目を通すどころか、テキストがどこにあるかもわからないし、どんな教材を使って勉強しているのか把握していない親御さんはすごく多いです。それでは適切なサポートはできません。

矢萩:あとは子どもって「自分だけやらされてる感」を持っていることが多いので、子どもの勉強を見ているときは親も何か勉強しているとか本読んでいるなどができるといいですよね。親御さんたちも忙しいとは思いますけれど。子どもをじっと監視しているのではなく、あなたのやることはこれ、私がやることはこれ、一緒に成長していこう、という空気感があると、子どもは単にやりなさい、と言われるより少しは受け入れやすくなると思います。

安浪:子どものサポート内容も、親は一度決めたたらずっと守るもの、と決めがちですけれど、今日はもういい、って言われたら引き下がっていいんです。あまりグダグダになってもよくありませんが、ある程度の柔軟さは必要だと思います。相手は小学生なんですから。

矢萩:親としてやってあげる、というより、チームとしてやっていこう、みたいな感覚も大事だと思います。これはあなたの希望を達成するためのチームだと。だから、お互いの得意を生かして、サポートし合って、無事プロジェクト達成しよう、という感じですね。

安浪:それはいいですね。「やったの?」と言うだけなら一番楽。それ以上見ていくのは親もめんどくさいから、その先は蓋をしがちです。でも結局、中学受験は子どもも親も面倒くさいことの連続なんです。中学受験をやると決めたら、親もその面倒くさいことから逃げずに、心してやってかないといけないのかな、と思います。

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安浪京子 矢萩邦彦
安浪京子 矢萩邦彦

安浪京子(やすなみ・きょうこ)/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は『中学受験にチャレンジするきみへ 勉強とメンタルW必勝法』(大和書房)。

矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

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