少子化の一方で中学受験者は年々増加しています。中学受験というと偏差値上位校の話題が注目されやすいですが、実際の受験者で上位層はごくわずか。もっとも多いのは「ボリュゾ」と呼ばれる中間層の子どもたちです。関西在住のライターで、2023年に娘の中学受験を経験した母親でもある東山令さんは、「偏差値50は決して世の同学年の真ん中ではなく、小学校のトップ層が繰り広げる熾烈な戦いだと気づいた」と言います。自らの体験を振り返りつつ、「ボリュームゾーンの中学受験」の現状と親が持っておきたい心構えについて、プロ家庭教師・西村則康先生に話を聞きました。

MENU ■偏差値30台からのスタート ■「“ボリュゾ”なのに偉そうにすみません」 ■中学受験と高校受験の偏差値の差は10~15 ■中学受験の幸せは偏差値で決まらない ■偏差値の「いたちごっこ」で残る徒労感 ■中学受験で「培うべき」ものとは?

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■偏差値30台からのスタート

 我が家が中学受験の準備を始めたのは、5年生の中頃から。中学受験の勉強開始時期としてはかなり遅く、中途半端なスタートでした。

 娘は幼稚園の頃から公文に通っていて学習習慣があり、学校の通知表でも主要4教科はすべて3段階で3。テストもほぼすべて満点だったため、中学受験でもそれなりのポジションに立てるだろうと予想していました。それがいかに甘い考えだったか、入塾後すぐに痛感させられます。

 中途半端な時期の入塾だと、授業もかなり進んだ状態から参加しなければなりません。しかも、小学校では習わない内容のため、返ってきた解答用紙は白紙や赤字まみれ。必然的に、最初のテストは厳しい洗礼となりました。

 なんと偏差値30台。得意の国語は偏差値55以上でしたが、積み重ねが必要な算数や知識が求められる理科・社会で惨敗。その後のテストや模擬試験でも、4教科の偏差値は見るに堪えないものばかりでした。遅れてのスタートだから当然といえばそうですが、勉強で落ちこぼれたことがない娘にとって衝撃的な経験でした。

 学校では変わらずトップ層でも、塾に行けば校舎内で最下層。周りに追いつく必要があるため、落ち込む暇もないほど勉強に追われる毎日でした。そうして数カ月間辛酸をなめ続け、なんとか受験者の中間層となる偏差値50前後に届くように。校舎内でも最下層を抜け、中間層~上位層に入ることが増えました。

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東山令
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