■「“ボリュゾ”なのに偉そうにすみません」
ところでTwitterに“中受垢”と呼ばれるアカウントがあることをご存じでしょうか。おもに、中学受験をしている子どもの保護者のアカウントを指します。受験人口が決して多いとはいえない中学受験では、コミュニティーが限定的で孤独感に苛まれやすいといえます。そのため、情報共有や相談相手を求めて、Twitterを利用する保護者が少なくありません。
メディアなどで語られる中学受験の主役は、ごくわずかな上位層の子たちの話がほとんど。中間層にあたる「ボリュームゾーン」の子たちがどのような受験をしているのか、スポットライトがあたる機会は少ないです。ボリュームゾーンの子をもつ保護者は、自らの家庭や子どもを「ボリュゾ」と称し、TwitterなどのSNSでそれぞれの悩みや状況を語っています。そこでみられる特徴が、自虐的なニュアンスを含んだ発言です。「ボリュゾなのに偉そうにすみません」「ボリュゾだけど参加していいのかな」など、自らや子どもを卑下する発言が少なくありません。
筆者自身もTwitterを通じて中学受験に向けて励む仲間と交流をしてきましたが、SNS上であってもそこにはヒエラルキーのようなものが感じられました。中堅校狙いでレベルが近いと思われる保護者の方とはフラットなコミュニケーションをとれるのですが、最難関狙いの保護者の方には同様に接してはいけないような感覚になるのです。やはり学歴至上主義を彷彿とさせるツイートが少なくないことが理由でしょうか。志望校や学力の差から漂うヒエラルキーに、もやもやとした違和感を覚えました。
■中学受験と高校受験の偏差値の差は10~15
「名門指導会」代表のプロ家庭教師である西村則康先生は、中学受験のボリュームゾーンには「大きな勘違いがある」と言います。
「ボリュームゾーンとは、中学受験者を母数とする受験者のなかで真ん中あたりの一番人数が多い層にあたります。偏差値でいうと50前後に該当します。偏差値50というと平均のイメージをもたれますが、小6全体でみると実はかなり上になります。
例えば、高校受験と中学受験で比べた場合、日能研のR4(合格可能性80%)や四谷大塚で偏差値50くらいの中学校が付属高校も入試をしていると、その高校の偏差値は65~70にあたります。高校の偏差値は+15~20のイメージで、これは首都圏も関西も同じです」
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