■偏差値の「いたちごっこ」で残る徒労感
今でこそそう振り返っている筆者ですが、最初からボリュームゾーンの受験に満足していたわけではありません。娘が惚れ込んだ受験先に出合ってからは堂々と中堅校狙いにシフトチェンジできたものの、それ以前はボリュームゾーンに対してネガティブな気持ちを拭いきれませんでした。
「少しでも偏差値を上げたい」「模試で偏差値が上がれば、より高偏差値の学校を目指してほしい」という欲望が高まり、娘に押し付けてしまった時期があります。娘は親の提案を受け入れて努力してくれたものの、不相応な目標にひどく苦しみました。
西村先生は、こうした保護者の考えに警鐘を鳴らします。
「子どもの偏差値が5ポイント上がったら、さらに5ポイントアップを目指そうとする親御さんが多いのです。このループにはまると、いつまで経っても終わりはありません。子どもの現状のポテンシャルや将来の幸福感などに目を向けず、偏差値表とにらめっこをしながら偏差値が上がった分だけ志望校を上げていくと、いたちごっこになるでしょう。子どもはそのことを感じ取っているため、徒労感だけが残っていきます」
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