■中学受験で「培うべき」ものとは?
偏差値のいたちごっこから抜け出すには、どのような意識で、どのように受験に関わるのがよいのでしょうか。
「中学受験ですべてが決まるわけではありません。少なくとも、大学受験あたりまでの長期的なプランニングを考えておいたほうがいいです。目的の大学へのルートという狭い考え方でなく、将来どういう人生を送ってほしいかという見方をしましょう。
ただし、世の中はどんどん変わっていくため、残念ながら今の親御さんの想像はほとんど当てにならないと思います。そのため、どういう世の中になったとしても、自分の力で考えて道を切り開いていける素地をつくることが一番重要です」
そのような“素地”とは、どうやってつくっていけるものなのでしょうか。
「素地をつくることを目標とし、そこから逆算をして中学受験を捉えてみてください。すると、中学受験で何を培うべきなのかがみえてくるでしょう。培うべきものは、子どもなりにある程度努力できたという満足感と、たくさんの小さな成功体験です。『自分は頑張ればできるんだ』という自信を培うことが、中学受験の本当の意味合いです。
また、中学受験のよさは、いっぱい失敗ができることにもあります。点数が下がったという失敗もありますが、点数は取れていなくても以前は考えが及ばなかったレベルまで考えられるようになったということもあります。同じ失点だったとしても、そこには成長があるのです。テストの問題用紙に残った処理の跡、進歩の跡に注目してください。そうした成長ポイントを見つけ、認めてあげる親御さんの姿勢がとても大切です」
筆者も偏差値のいたちごっこで娘を苦しめた過去について、今も申し訳なく思います。当時は高望みばかりしていて、親子ともに受験は苦しいものだと感じていました。しかし、いたちごっこをやめて、成長をともに喜ぶ受験に切り替えてからは、ハードな毎日でも心は軽くなりました。中学受験で本当に大切にすべきものは何なのか、それぞれの家庭で考えてみることが必要になるでしょう。
(東山令)