■解説して終わってしまう家庭教師はダメ

矢萩:教科ができるようになりたい場合は、最低限わかりやすく教えられる人というのは大事で、それができるのであれば、プロであろうと、大学生であろうと、関係ないと思います。どっちでもちゃんと教えられる人はいるし、教えられない人もいる。

安浪:大学生の家庭教師で多いのは、先生が一方的に解いて、解説して終わってしまう教え方。大学生だけに限らず、プロの先生でも塾でも多く「今の先生のこの指導法で大丈夫でしょうか?」というご相談をたくさんいただくんですが、それはダメです。教え方が上手か下手かだけでなく、子どもが一人でも解けるような力をつけることが大切です。正直、教えるスキルにもセンスの有無は関係します。最初から子ども目線に下りて教えられる人もいれば、指導経験を積む中でだんだんできるようになる人、どうしてもそれができず一方的に教えるだけに終始する人などいろいろですね。

矢萩:そうですね。教え方がいまいち、ということであれば修正してもらったほうがいいですよね。

安浪:はい、最初から「この先生は無理だ」と諦めるのではなく、指導方法を変えてくれるよう、やんわり提案する。「先生の解説は大変わかりやすいんですけど、先生が帰ると解けなくなってしまうので、自分一人で解けるようにしてほしいんです」とか。それを言っても変わらないようだったら、その人は教えるセンス、あるいは子どもの学力を上げるスキルを持っていないのかもしれない。仕事でも何でもそうですが、自分のやり方を少しずつ、より良い方向に修正していける能力は大切です。

矢萩:相性がいいかどうかを見るには、先生の話が苦痛や違和感なく聞けるかどうか。そういうことに子どもは敏感です。そして対話をするなかで、子どもが前向きになっているかどうか。話していて前向きになる人に教えてもらえれば、その教科のイメージも前向きになる。そうなれば、「次に先生が来たらこれ聞こう」と、わからないことにも前向きになれる。この変化が成長に繋がります。

安浪:本当にそう思います。先生が来るのを嫌がったらアウトです。もちろん、1、2時間机に座って勉強しなければならないので、最初のうちは先生が来るのが嫌ですよ。でも、相性がいい先生なら、だんだん変化してくるんです。勉強はしんどいけれど、先生が帰った後に元気になっているとか、雰囲気が明るくなっているとか。その辺りが見極めポイントかと思います。

(構成/教育エディター・江口祐子)

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安浪京子 矢萩邦彦
安浪京子 矢萩邦彦

安浪京子(やすなみ・きょうこ)/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は『中学受験にチャレンジするきみへ 勉強とメンタルW必勝法』(大和書房)。

矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

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