【解説】

 お答えします! 小学生の子どもの夏休みの宿題を手伝う親は今、6割に上るともいわれているそうですね。でも、学校の先生は宿題を親がどれくらい手伝っているか、見ただけで分かるものです。当然、どれくらい子どもがその宿題を、本気で親と一緒にやったのかも、一目で分かってしまいます。

 宿題に限らず、教育、あるいは「学び」とは、できる人ができない人を補って、互いが助け合って、それぞれが知識や技能を広げ、深め合うことだと私は思います。

 多くの人の心をつかむ思想家として、現代にも通じる考えを説き続けた孔子の言葉に、「父は子の為に隠し、子は父の為に隠す。直(なお)きこと其(そ)の中(うち)に在(あ)り」(子路第十三)があります。

「父親は子どもをかばってやろうとするし、子どもは父親をかばおうとする。真の正義は、おのずから、そのかばい合う中に存在する」という意味です。

 中国でも古くから賛否両論あるところですが、孔子の教えに始まる儒家の倫理観では、国家の利益よりも家族間の愛情が、より重んじられています。

 ここに書かれた「父」は、紀元前500年ごろの文献ではほとんど「母」など女性について書かれていなかったというだけで、現代であればこの部分を、「母」とも言い換えることができそうです。父、母、いずれにしても、親は子どものためを考えて、一緒に宿題をしたりするのが家族の絆を深める大切な時間だと、私も思います。

 小学校の6年間は親子にとって、もっとも貴重な期間です。中学生以降になると、親と子どもの関係がそれまでとはまったく異なった大人同士の関係になることだって少なくありません。勉強だって、中学、高校になるとだんだんと難しくなって、親が教えてあげられなくなるレベルになります。

 相談者さんが言う「宿題は子ども自身がすべきで、親が手伝ったら子どものためにならない」という考えは、もちろん原則としては間違っていませんが、親は子どもに宿題を教えながら、子どもは親に宿題を教えてもらいながら、宿題以上に貴重な「感性」や「情」をお互いに交換しあっているのです。原則を気にして、こうした大切な親子の間のやり取りを奪うのは残念な気がします。

次のページへ「学ぶ」ことの楽しさ、「考える」ことの大切さを
1 2 3