ただ、もし、相談者さんの妻が「低い評価になったらかわいそう」と思って手出ししているとしたら、「評価はあまり気にせずに」と言いたいです。他人と比べることほど、娘さんたちを苦しめる結果になることはありませんから。人との「競争」よりもっと「学ぶ」ことの楽しさ、「考える」ことの大切さを教えてみてください。
「学びて思わざれば、則(すなわ)ち罔(くら)し。思いて学ばざれば、則ち殆(あやう)し」(為政第二)という『論語』の言葉はあまりにも有名ですが、この言葉を実践している人は非常に少ないのではないかと思います。勉強は、「競争」に勝つためにするものではありません。自分が知らない世界が無限に広がっていることを知ること。世界の歴史の発展の中のどの辺りに自分がいるのかを知ること。自分の中にある問題を、自分で納得できるように解決する方法を見つけ出すこと。
勉強は、こんなことのためにあるのではないでしょうか。「学ぶ」ことは、人と交わることでもあります。人と交わりながら、考える力を養うことこそ、本当の夏休みの課題なのではないかと思うのです。
【まとめ】
親子で一緒に宿題をすることは、家族の絆を深める大切な時間。ただし、人との「競争」に勝つためでなく、「学ぶ」楽しさを家族で共有しよう
山口謠司(やまぐち・ようじ)/中国文献学者。大東文化大学教授。1963年、長崎県生まれ。同大学大学院、英ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。NHK番組「チコちゃんに叱られる!」やラジオ番組での簡潔かつユーモラスな解説が人気を集める。2017年、著書『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞受賞。著書や監修に『ステップアップ 0歳音読』(さくら舎)『眠れなくなるほど面白い 図解論語』(日本文芸社)など多数。2021年12月に監修を務めた『チコちゃんと学ぶ チコっと論語』(河出書房新社)が発売。母親向けの論語講座も。フランス人の妻と、大学生の息子の3人家族。