小学1年生の息子を持つ30代の父親。ワガママな友達A君にいつも譲ってばかりの優しい息子をふびんに思い、A君の親に「順番やルールを守ってほしい」と伝えたところ、「嫌と言えない息子に原因がある」と言われてしまい憤慨しています。「論語パパ」こと中国文献学者の山口謠司先生が、「論語」から格言を選んで現代の親の悩みに答える本連載。今回の父親へのアドバイスはいかに。

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【相談者:6歳の息子を持つ30代の父親】

※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 小学1年生の息子を持つ30代の父親です。1学期から息子が、帰り道が一緒でよく遊ぶ同級生のA君に悩まされています。A君は、はっきりいって超ワガママ。まず息子の物を欲しがります。息子のおもちゃや漫画、拾った石や草花まで……優しい息子はいつもA君に譲ってばかりです。たまに息子が貸し渋ると、A君は「〇〇(息子の名前)なんて大嫌い!」などと傷つく言葉を吐きます。A君の親は、子どもに口出ししない方針で、全く叱りません。

 2学期になりA君の態度がひどくなったので、A君の親に「順番に使ったり、ルールを守ったりすることが大事、と伝えてもらえないか」と相談したところ、「譲りたくないときは、『嫌だ』と言えるように教えるべきだ。なんでも譲るから、ゴネさえすれば手に入るとAは思っている」と言われてしまいました。A君のワガママは、A君の親から来ていると感じます。改めさせる方法はないのでしょうか。

【論語パパが選んだ言葉は?】

・「朋友に数(しばしば)すれば、斯(こ)れ疏(うと)んぜらる」(里仁第四)

・「果(か)なるかな、之(こ)れを難(かた)しとする末(な)し」(憲問第十四)

【現代語訳】

・「友達付き合いもしつこくすれば、かえって嫌われることになる」

・「果断で割り切って平気でいることができれば、世の中、難しいことはないだろう」

【解説】

 お答えします。友人同士の関係は、「対等」であることが重要です。嫌なことをされて「やめて」と言えない息子さんは、はっきりいって、よくないです。本当に嫌なら、はっきりと「NO」と言うことができる人に親は育てるべきです。もしかして相談者さん自身も、嫌なことをされても「やめて」と言えず、優しさこそ「善」だと思っている方ではありませんか? 「大嫌い」なんて言うA君は確かに問題ですが、それでも友達として付き合っている息子さんは、そう言われてもその子と一緒に遊ぶのが楽しいのかもしれません。

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山口謠司
山口謠司

山口謠司(やまぐち・ようじ)/中国文献学者。平成国際大学新学部設置準備室学術顧問。大東文化大学名誉教授。1963年、長崎県生まれ。同大学大学院、英ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。NHK番組「チコちゃんに叱られる!」やラジオ番組での簡潔かつユーモラスな解説が人気を集める。2017年、著書『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞受賞。著書や監修に『眠れなくなるほど面白い 図解論語』(日本文芸社)など多数。2021年12月に監修を務めた『チコちゃんと学ぶ チコっと論語』(河出書房新社)が発売。ラジオパーソナリティ、イラストレーター、書家としても活動。フランス人の妻と、大学生の息子の3人家族。

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