安浪:そうなんですね。私はASDについてはあまり詳しくないのですが、「他人の状況はわからなくても自分の状況はわかる」という視点は驚きです。

矢萩:「今はこれができる状態ではない」とか「今は邪魔してほしくない」とか、ストレスに敏感な印象があります。ただ、それを伝えるのは苦手な人が多いかもしれません。

■何年生から始めるかより、勉強する環境をどうつくるか

安浪:このお母様、息子さんの特性を見ながら今までいろいろサポートされてきて、その上で中学受験のための塾通いを検討されている、ということですね。今までこの連載で何度も言ってきたように、ASDの子に限らず、塾通いは早ければいい、というものではありません。一般に4年生からスタートするほうがいいと言われるのは、中学受験のカリキュラムはやることが膨大にあり、多くの塾が新4年生から本格的なカリキュラムをスタートさせるので、そこから始めたほうがレールに乗りやすい、という意味です。実際には6年から受験勉強を始めて合格する子もいます。4年から始めてもやらされ感いっぱいならあまり意味がありません。どの学年からスタートしようと、本人がどこまで自分ごととして勉強に取り組めるかに尽きると思います。

矢萩:ASDのお子さんの場合、「何年生から始めるか」よりも、「勉強する環境をどうつくるか」が大事だと思います。一言で言うと、「本人が安心してその場所にいられるかどうか」。成績だとか、周りの人間関係だとかを気にすることなく、目の前のことに集中できる環境をつくってあげる。特に先生との相性は大事ですね。僕は、生徒と先生の相性を特に重要視していますが、ASDの傾向があるお子さんの場合は特に影響が大きいと感じています。

安浪:相性ですか……。となると大手進学塾の大規模校舎のように、一つの学年が何クラスにも細かく分かれていて、しょっちゅうクラス昇降があるために先生がコロコロ変わるような塾は難しいですよね。むしろ、各学年1~2クラスしかなくて先生が変わらないアットホームな感じの塾で、相性のいい先生が見つかれば、そのようなところがいいのかもしれないですね。

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