中国への高関税に先立ち、トランプ政権は3月以降、中国だけでなく、EUや日本、カナダ、メキシコなど幅広い国からの鉄鋼やアルミ製品に対しても、高い関税をかけ始めた。EUやカナダなどは高関税で反撃に出たが、日本は「(仕返しの)応酬はどの国の利益にもならない」(世耕弘成経済産業大臣)として、仕返しには踏み切っていない。トランプ氏は、自動車の輸入品に対しても高関税を検討しており、実際に発動されれば、アメリカへの輸出が多い日本にとっても打撃となる。

 トランプ氏は2国間の「ディール(取引)」を重視しており、今後は中国との交渉で何らかの合意ができるかがポイントとなる。報復合戦がエスカレートして本格的な貿易戦争になれば、米中両国だけでなく、世界経済にも影響を与えるのは確実だ。(解説/朝日新聞GLOBE副編集長・五十嵐大介)

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外国からの輸入品に対し、自分の国の製品を守るためにかける税金。世界の貿易ルールを決めている世界貿易機関(WTO)では、加盟国・地域に一定率以上の関税をかけないよう定めている。トランプ政権が始めた一方的な関税はWTOのルール違反とみられており、報復合戦が広がれば、WTO自体の存在意義も揺らぐ。

※月刊ジュニアエラ 2018年9月号より

ジュニアエラ 2018年 09 月号 [雑誌]

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五十嵐大介
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