7月1日の午後、ハイブランドのショップなどが立ち並ぶ銅鑼灣(コーズウェイ・ベイ)の路上で「国安(法)恐れず、民権に光あれ」というプラカードを手に神に祈る女性(写真/Kaoru Ng)
7月1日の午後、ハイブランドのショップなどが立ち並ぶ銅鑼灣(コーズウェイ・ベイ)の路上で「国安(法)恐れず、民権に光あれ」というプラカードを手に神に祈る女性(写真/Kaoru Ng)

 昨年来、激しいデモが繰り広げられてきた香港に、中国が直接介入に踏み切った。「一国二制度」に目を奪われがちだが、中国を支持する勢力がいることも現実だ。ジャーナリストの今井一が、揺れる香港の現状を追った。

【謎の暗号のようなこの図形が香港の人なら読める!? 写真はこちら(計7枚)】

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 中国の全国人民代表大会は、6月30日に「香港国家安全維持法(国安法)」を可決・成立させ、香港行政府は同日午後11時にこれを施行した。終身刑もあるこの法律の施行に香港市民がどう反応するか注目されたが、1万人以上が街頭に出て、ひるむことなく抗議の声を上げた。

 警察発表によれば、この日、370人が逮捕され、うち国安法違反が適用されたのは10人のみ。そのほとんどが、「香港を取り戻せ、革命の時だ」を意味するスローガン「光復香港 時代革命」の旗を掲げたり、そのシールを所持したり、また「香港独立」と記した旗や印刷物を所持したことが理由だ。

 要するに、国安法違反で逮捕された者に共通する主張は、「独立」と「革命」。このスローガンとは異なる「高度な自治」「普通選挙」を求める主張に関しては、同法適用で逮捕された者は一人もいなかった。

 これは偶然ではなく、はっきりとした線引きがなされていたと考えられる。「一国二制度」はともかく、「二国」を主張するのは断じて許さない、ということだ。

謎の暗号のようだが、デモのスローガン「光復香港 時代革命」を意味する
謎の暗号のようだが、デモのスローガン「光復香港 時代革命」を意味する

謎の図形に秘める意味

 現にこの翌日、香港行政府は以下のような声明を発表した。

<「香港独立」はもちろんのこと「光復香港 時代革命」というスローガンもまた国安法に抵触する可能性がある。これらは香港独立もしくは香港特別区を中華人民共和国から分離させ、特別区の法的地位を改変または国家政権を転覆させる意味を含んでいる。(当局としては)国家主権、統一、領土保全に挑戦するいかなる行為にも厳しく対処する>

 こうした当局の姿勢を受けて香港市民が考えた対抗策はいろいろある。

 たとえば、スローガンの漢字を極端に抽象化して記した旗やプラカードを掲げる方法もその一つ。八つの図形のように見える暗号のような図は、実は「光復香港 時代革命」をかたどっている。

 また、街頭に8人が横並びで立ち、各自が1枚ずつ白紙のプラカードを掲げる。これだけで「光復香港 時代革命」という表現が成立する。いずれもまるで暗号のようだが、たいていの香港市民は意味がわかるはず。

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習近平中国国家主席の剛腕