わっかフェスで披露された秋田竿燈まつり。「どっこいしょ、どっこいしょ」の掛け声とともに、「差し手」が妙技を見せた
わっかフェスで披露された秋田竿燈まつり。「どっこいしょ、どっこいしょ」の掛け声とともに、「差し手」が妙技を見せた

 秋田市の「あきた芸術劇場ミルハス」で3月9日に開催された第1回「わっかフェス」(主催・三菱商事、朝日新聞社、AAB秋田朝日放送)。秋田の伝統芸能と大学生、高橋優&スカパラがつながった。AERA 2023年4月3日号の記事を紹介する。

【写真】立教大学「合唱団アヒル会」代表の中山希実さんと同会メンバーの入江遥さん

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 「わっかフェス」のトップを飾った「秋田竿燈まつり」は、260年以上の歴史を持つ。8メートル近い竿燈を「差し手」と呼ばれる演者が肩や腰にのせる絶妙の技を披露すると、会場は手拍子で包まれた。「根子番楽」は、北秋田市の根子集落に伝わる山伏神楽の流れを汲むとされる。勇壮な武士舞が特徴で、武士同士が切り合うシーンでは火花が散るなど、手に汗握るパフォーマンスで観客を圧倒した。

 伝統芸能のラストは、「なまはげ太鼓」。秋田の男鹿半島一帯に伝わる「男鹿のナマハゲ」と、日本古来の「和太鼓」を融合させた男鹿独自の郷土芸能だ。

 ステージには、ナマハゲ姿の和太鼓パフォーマンスユニット「Akita和太鼓パフォーマンスユニット音打屋-OTODAYA-」の6人と、立教大学の伝統芸能サークル「合唱団アヒル会」の4人が上がり、力強い太鼓演奏を繰り広げた。

 その和太鼓を打ち鳴らしたのは、立教大学2年の入江遥さん。サークルでも和太鼓を担当する。

 和太鼓の魅力は、

「指揮者がいない中、ピタリと全員の音が合います。それが楽しいと思う瞬間です」

 と話すが、昨年8月まで和太鼓は全くの未経験。コロナ禍も落ち着いてきたので、何か面白いことを始めたいと思いツイッターで見つけたのがアヒル会。

 これまで人前での演奏は、昨年11月の学園祭くらい。ここまで大きな会場も、大人数の前で演じたこともなかった。この日に向け、秋田でなまはげ太鼓の奏者から何度も指導を受け、両手にマメができつぶれるまで練習した。本番前は緊張したが、

「全てやり切って、楽しいステージを作ることができたと思います」

 と声を弾ませた。

■“化学反応”が起きた

 フェスの後半は、秋田県横手市出身のシンガー・ソングライター高橋優さんと、そろいのスーツで楽器を吹き鳴らす9人組の「東京スカパラダイスオーケストラ(スカパラ)」の演奏。

 まず高橋さんが自身の代表曲「明日はきっといい日になる」を熱唱し、観客の心をぎゅっとつかんだ。

 続いてスカパラが登場。1曲目の「DOWN BEAT STOMP」からヒートアップ。観客は総立ちになり、中盤から高橋さんが再登場し、スカパラの「太陽と心臓」などを一緒に披露すると、会場は熱狂の渦に包まれた。

 ラストは、出演者全員とスカパラのコラボ。スカパラが軽快な「Paradise Has No Border」で盛り上げると、会場のボルテージは最高潮に達し、全員が一つの「わ」となった。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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