更年期を克服しつつある本橋純子さんは、3月に登壇する社内セミナーで発表するため、自身の更年期症状のしんどさの推移をグラフ化した(撮影/写真映像部・高野楓菜)
更年期を克服しつつある本橋純子さんは、3月に登壇する社内セミナーで発表するため、自身の更年期症状のしんどさの推移をグラフ化した(撮影/写真映像部・高野楓菜)

 結婚・出産後も働き続ける女性が増える中、更年期の不調に悩む人も増えてきた。仕事でも責任ある立場になり、家庭でも子の受験や親の介護などに追われる時期。働き続けるには、職場の相談体制を整えることが大切だ。AERA 2023年3月13日号の記事を紹介する。

【この記事の写真をもっと見る】

*  *  *

 ダイバーシティーや健康経営の一環として、女性の健康支援の取り組みを始めた企業もある。

 PwCあらた有限責任監査法人は、今年から女性の健康課題への支援を手厚くしていく方針だ。企画管理本部マネージャーの高潤玉(こうゆの)さんはこう語る。

「数年前からダイバーシティー経営の一環で柔軟な働き方を推進してきましたが、昨秋から、経済産業省により創設された『健康経営優良法人』の認定項目の一つの女性の健康施策実施状況に施策参加率の開示が求められるようになったこともきっかけの一つ。先月、女性管理職向けの社内アンケートで、今後取り上げてほしい健康テーマのトップで上がってきたワードが『更年期』だったんです」

 同社が3月中旬に開く社内セミナーでは、新たに更年期にまつわるテーマを取り上げる。産業医による講演のほか、同社アシュアランス・イノベーション&テクノロジー部マネージャーの本橋純子さん(51)が自らの経験談を話す予定だ。本橋さんは、更年期の症状で体のだるさと気持ちの落ち込みに悩まされた。20年がピークで、週末は寝込んで気分のリフレッシュが全くできない時期が長く続いたという。更年期のつらさをグラフにして可視化し、母の介護や父の看取(みと)り、娘の中学受験と、プライベートで切羽詰まった時期に連動して症状が強く出ていたこともわかった。「経験を話すことで、社内で更年期のことを話しやすくする雰囲気が生まれれば」と登壇を引き受けた。

「社員に共有したいのは、更年期はずっとトンネルの中じゃなく、いつかは終わるということ。社内外の仕組みを使い倒して乗り越えられる可能性があります。例えば、私は健保組合のメンタルカウンセリングの制度を利用しましたが、同年代のカウンセラーに状況をシェアし共感を得ることで前向きになり、徐々に症状が落ち着きました」(本橋さん)

次のページ