※写真はイメージ(gettyimages)
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 スマホ依存は若い世代の問題と思われがちだが、スマホの使いすぎで日常生活に支障をきたす中高年も少なくない。さらに、テレビを視聴しながらスマホをいじることで、情報過多になっている可能性もある。依存症から抜け出す回路を紹介する。AERA 2023年2月6日号の記事から。

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 依存症は身近な環境の影響を受けやすい。24時間いつでも常に手の届く位置にあるスマートフォンはその最たるツールだ。近年はスマホの使いすぎで日常生活に支障をきたす中高年も増えているという。

 50代のマネジャー職の男性は就寝中、スマホの着信音でふいに目覚めた。慌ててスマホをチェックするが、着信履歴はなかった。「空耳か……」。しばらく動悸が治まらず、その後もなかなか眠れない。こんなことが何日も続いた。

「仕事のことが常に頭から離れません。物忘れも激しくなり、気分も落ち込みます」

 男性はこう打ち明け、デジタルデバイスと距離を置く決心をした。

 この男性から相談を受けた「日本デジタルデトックス協会」の森下彰大理事(30)は「スマホ依存は今や若い世代だけの問題ではありません」と話す。同協会が主催するデジタルデトックスの基本を学ぶ講座の参加者もメイン層は40~50代。企業の管理職や経営層からもよく問い合わせを受けるという。

 スマホ依存が原因で物忘れがひどくなるのは「脳疲労」の可能性がある、と森下さんは指摘する。

「スマホからの過剰な情報収集によって脳の前頭前野が過労状態になり、判断力や感情のコントロール力低下などのリスクが高まります」

■テレビ+スマホの負担

 森下さんは中高年の「情報過多」の要因の一つに、テレビの視聴習慣を挙げる。

「今の中高年はテレビに親しんできた世代です。私の両親もそうですが、実家へ帰るとBGMのように常にテレビが流れています。テレビを観ながらスマホをいじる『デジタルマルチタスク』は脳への負担がとても大きいと言われています」

 22年のスマホ利用率は60代で9割超との調査結果もある。テレビとスマホの両方から膨大なデジタル情報を日々浴び続ける中高年世代は、テレビが必需品ではないデジタルネイティブ世代よりも脳が疲弊している可能性もある。しかも今は、ウクライナ情勢やコロナ禍など不安をあおる情報であふれている。森下さんはそうしたネガティブな情報をひたすらあさってしまう「ドゥーム・スクローリング」にも警鐘を鳴らす。

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