1月2日、東京・大手町をスタートする21チーム。今年は駒澤大が学生3大駅伝3冠を達成、中央大が「古豪復活」を印象付ける2位に入った(写真:代表撮影)
1月2日、東京・大手町をスタートする21チーム。今年は駒澤大が学生3大駅伝3冠を達成、中央大が「古豪復活」を印象付ける2位に入った(写真:代表撮影)

 正月を代表する人気イベントである箱根駅伝。関東の「地方大会」だが、来年は100回大会を記念し、予選会の出場権が全国に拡大される。どのようなねらいがあるのだろうか。AERA 2023年2月6日号の記事を紹介する。

【図】現状では全国大会でも上位は関東勢?

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 新春の箱根路を駆ける217.1キロは、今や正月を代表する一大イベントだ。東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)の生中継が1987年に始まって35年あまり。今年も世帯平均で往路27.5%、復路29.6%の高視聴率をたたき出し、沿道での観戦者は2日間で91万人に上ったという。

 1920年に出場4校で始まった箱根駅伝は、戦時下の中断をはさみながら1世紀にわたり継続、来年で第100回大会を迎える。2019年には、世界陸連が陸上史に貢献した団体や個人に贈る「ヘリテージプラーク」にも認定された。大会を主催する関東学生陸上競技連盟(関東学連)の有吉正博会長(帝京科学大学特任教授)はこう話す。

「私は大学1年生だった1967年に初めて箱根駅伝を走って以来、選手・指導者・主催側として55年にわたって箱根駅伝に携わってきました。私が選手だったころと比べると競技力も注目度も格段に上がっています。関東学連主催のローカル大会である箱根駅伝がこれだけ注目され、評価していただいているのは驚くとともに大変ありがたいことだと思っています」

AERA 2023年2月6日号より
AERA 2023年2月6日号より

■大学4校で始まった

 有吉会長の言葉にもあるように、箱根駅伝は関東学連が主催して関東の大学が競う「地方大会」だ。ただ、地方大会でありながら全日本大学駅伝、出雲全日本大学選抜駅伝競走(出雲駅伝)と並ぶ大学3大駅伝に数えられ、人気や知名度では他の2大会を圧倒する。

 その箱根駅伝への門戸が、100回大会を記念して全国の大学に開かれる。箱根駅伝には前年10位以内だったシード校10校と10月に行われる予選会を勝ち抜いた10校、オープン参加の関東学生連合チームの計21チームが参加する。予選会へ参加できるのは、従来は関東の大学(関東学連男子登録者)だけだが、100回大会では全国の大学(日本学生陸上競技連合男子登録者)に拡大されるのだ。有吉会長はねらいをこう説明する。

「箱根駅伝が始まった1920年は今のような形に地区分けされた学連などはなく、発案者の金栗四三に共鳴した大学4校が寄り集まって、『世界で戦える長距離選手を育てよう』と始まった大会です。100回を機に、その原点に立ち返りたい。また、箱根駅伝は本当に多くの方の協力で成り立っています。運営には今年の大会で言うと67大学から2千人近い補助員を出していますし、沿道の東京都・神奈川県にも多大な協力をいただいている。予選会に各地区から参加していただくことで、そうした生活圏を走る道路レースの魅力・すばらしさもさらに伝えられるのでは、と考えています」

(編集部・川口穣)

AERA 2023年2月6日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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