「Q」だと疑われるロン・ワトキンス氏(右)と父親のジム氏/2021年10月、米ラスベガス
「Q」だと疑われるロン・ワトキンス氏(右)と父親のジム氏/2021年10月、米ラスベガス

 一兵衛氏、村井氏の「2トップ」のほかに、団体にとって重要な拠点になっていた静岡の幹部ら8人も、12月1日になって静岡県警に逮捕された。3月に県内の集団接種会場に侵入したという建造物侵入容疑で、「ワクチン接種は殺人行為だ」などと虚偽の主張を振りまいていたという。8人はそれぞれ、静岡簡裁から罰金10万円の略式命令を受けた。

 3都府県の警察が22年に逮捕した神真都Qのメンバーは計22人。捜査当局がいかに団体を危険視し、捜査に本腰を入れたか、それがうかがえる。

有罪の4人が「座談会」

 警視庁が逮捕した計13人のうち、冒頭で触れた裁判を受けた5人は、全員が罪を認め、団体には退会届を提出。一兵衛氏は被告人質問で「解散請求したい」と述べ、判決文には一兵衛氏を含む5人について、「反省の態度を示している」と記された。

 だが、果たして本当にそうなのか。正直、疑問があると言わざるをえない。

 その裏付けとなるのが、判決日のまさにその夜に出された動画だ。そこでは、有罪判決を受けたばかりの5人のうち4人が、「座談会」と称して事件について話している。一兵衛氏は事件をこう言う。

「子どもが川におぼれている時に、見て見ないふりをしますか。飛び込むでしょ」

「建造物侵入でも正当な理由があって、たとえば(他人の)家が火事になって、そこに子どもが残されていますと。勝手に入って子どもを助けたと」

 また、こんな発言もした。

「子どもを一人でも救えたら成功。戦ってくれた同志がいて、俺は成功したなと思っている……子どもの命を俺たちは救ったんだよね」

 これらを聞く限り、一兵衛氏らは、事件を起こしたことを反省しているというよりも、正当化しているようだ。私は、一兵衛氏の父親が、法廷で語ったこんな言葉を思い出した。それは一兵衛氏の性格についてであり、同時に、陰謀論のおそろしさを示すものでもあった。

「ひねくれているところがある。『カラスは黒だと言えば振り向いてもらえない。白だと言えば、(動画共有サイトの)ユーチューブなどでこいつは何を言っているんだと振り向いてくれる』と」

「なかなか思想みたいなものを変えるのは、難しいところがあります」

■続けているデモ活動

 また、一兵衛氏や村井氏がいなくなっても、神真都Qはデモ活動を続けている。私は11月、12月に東京であったデモをのぞいたが、「ワクチンにはリスクしかない」といった虚偽の主張のほか、「厚労省を潰せ」といった過激な叫びも聞かれた。

 デモの参加者に話を聞くと、事件についての言及は避けつつ、こう述べた。

「子どもを守りたいというのが一番。私たちは目覚めているから、他の人も目覚めさせなくちゃいけない」

 その根は、どこまでも深い。(朝日新聞記者・藤原学思)

AERA 2023年1月16日号