旧統一教会の祝福2世として生まれた女性は「親からの無償の愛は子どもの自分ではなく教祖や神様のものだったことがつらかった」(photo 編集部・福井しほ)
旧統一教会の祝福2世として生まれた女性は「親からの無償の愛は子どもの自分ではなく教祖や神様のものだったことがつらかった」(photo 編集部・福井しほ)
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 国会で旧統一教会問題が取り上げられているなか、被害者は苦しみ続けている。脱会後も悩んでいるという「祝福2世」の女性に話を聞いた。AERA 2022年10月31日号の記事を紹介する。

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 声を震わせながら語ったのは「普通の家庭」が崩壊したことへの怒りだった。高知県に住む橋田達夫さんは、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)信者の元妻が1億円に上る高額献金をしたことなどが原因で約9年前に離婚。さらに、元妻と同居していた長男が約2年前に自死したことをメディアに訴えてきた。その橋田さんの自宅を教団の勅使河原秀行・教会改革推進本部長が突然訪れ、「マスコミに出ないでほしい」などと要請したという。橋田さんは10月18日に弁護士とともに東京都内で記者会見を開き、教団に抗議書を送付したことを明かした。

■恋愛は殺人以上の罪

 壊された「家」は他にもある。

 都内の40代女性の両親は、教団を通じて結婚。女性は「祝福2世」として生まれた。母親は熱心な信者で、政治家などの重要人物をつなぎとめる「VIP渉外」の責任者として従事。自宅は活動拠点となり、多いときは約30人の大人が暮らす「ホーム」と呼ばれていたという。

「原罪のない神の子」として生まれた女性は特別扱いを受ける一方で、監視下に置かれた。

「祝福2世の最大の失敗は、祝福を受ける前に異性と関係を持つこと。堕落と言われ、強盗や殺人以上の罪として地獄の底に置かれるんです」

 恋愛漫画や異性関係に関わる作品に触れるのは一切禁止。男子と遊ぶのも厳禁だったという。

 国政選挙や「修練会」の時期になると、大人たちは一斉に家からいなくなった。だが、献金によって家は常に困窮状態。空腹に耐えかねて土を掘って食べたり、スーパーの廃棄品を探し歩いたり。給食の見本を持ち帰ったことが見つかり、家に食べものがないことを教師に打ち明けたときには、「うそをつくな」と怒られた。

「近所の人が食べさせてくれた時期もありました。でも、親や一緒に住んでいるお姉さんがお礼に上がるときに、困っていることはないか、病気の親族がいないかと詮索(せんさく)し始める。あの家はヤバいとなって距離を置かれてしまうんです」

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