中村福之助(なかむら・ふくのすけ、左):1997年11月生まれ。2000年9月、歌舞伎座「京鹿子娘道成寺」の所化喜念坊と「菊晴勢若駒」の春駒の童で初代中村宗生を名乗り初舞台。16年10月、三代目中村福之助を襲名/中村歌之助(なかむら・うたのすけ):2001年9月生まれ。04年9月、歌舞伎座「菊薫縁羽衣」の宿星の童子、「男女道成寺」の所化仙念坊で初代中村宜生を名乗り初舞台。16年10月、四代目中村歌之助を襲名(撮影/伊ケ崎忍)
中村福之助(なかむら・ふくのすけ、左):1997年11月生まれ。2000年9月、歌舞伎座「京鹿子娘道成寺」の所化喜念坊と「菊晴勢若駒」の春駒の童で初代中村宗生を名乗り初舞台。16年10月、三代目中村福之助を襲名/中村歌之助(なかむら・うたのすけ):2001年9月生まれ。04年9月、歌舞伎座「菊薫縁羽衣」の宿星の童子、「男女道成寺」の所化仙念坊で初代中村宜生を名乗り初舞台。16年10月、四代目中村歌之助を襲名(撮影/伊ケ崎忍)

 花形(若手)俳優が中心の「八月納涼歌舞伎」が3年ぶりに幕を開けた。第一部で上演されているのは、手塚治虫原作の「新選組」。主人公を演じる中村歌之助と、親友役の兄・中村福之助が語り合った。AERA 2022年8月15-22日合併号の記事を紹介する。

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――手塚治虫の漫画『新選組』が初めて歌舞伎化された。幕末の京都を舞台に、父の仇を討つために新選組に入隊した少年・深草丘十郎と、その親友・鎌切大作との友情が描かれる。主人公の丘十郎を演じるのは中村歌之助(20)、大作を兄の中村福之助(24)が演じている。

歌之助:手塚先生が作品を発表されたときに「史実は手偏(新撰組)であって、この『新選組』はしんにょうをあえて使っている」とおっしゃっていますが、「新選組」は、手塚先生が現代に伝えたい思いがすごく新しい解釈で描かれています。正しい行いがどういうものなのか、平和とはどういうことなのか。そのテーマは今の時代にも響くと思いますし、若い丘十郎が成長する中でもがき苦しみ、どこに正解を見いだすのかも現代の世界に共通していることだと思います。また、世界中から愛される手塚作品というところもみなさんに興味をもっていただけると思っています。

 *ここの文中見出しトル――二人にとって手塚作品は幼い時から馴染みがあったという。

歌之助:母(三田寛子)方の祖父が手塚作品を好きだったこともあって、『鉄腕アトム』『どろろ』『ジャングル大帝』『ブッダ』などはよく読んでいました。手塚先生の漫画はファンタジックな世界が歌舞伎にすごく似ていると昔から思っていたんです。特に『どろろ』は歌舞伎にできると思っていました。『新選組』が手塚作品では初めての歌舞伎化となりますが、周りからも「意外だね」とよく言われるんですよ。

福之助:そういった意味でも、お客様に期待していただけると思います。ただ「新選組」は完全な新作だから、将来これが歌舞伎として定着するように作らなければいけない。僕たちがコケたら次に続かないんじゃないかと、そのプレッシャーは少しあります(笑)。

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