鮮やかな色合いのファッションと帽子がトレードマーク/2011年4月1日(写真:PA Images/Alamy Stock Photo)
鮮やかな色合いのファッションと帽子がトレードマーク/2011年4月1日(写真:PA Images/Alamy Stock Photo)

 英国史上最長となる在位70周年を迎えたエリザベス女王。祝賀ムードに沸く英国からユニークなドキュメンタリーが届いた。AERA 2022年6月20日号より紹介する。

【写真】戴冠式の日のエリザベス女王とエディンバラ公フィリップ殿下

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「一番驚いたのは、若き日のエリザベス女王が実にグラマラスだったことでしょうか。あのポール・マッカートニーに『10代の僕らにとって、彼女がどれほどイケてるアイドル的な存在だったか!』と言わせるほどに」

 と笑いながら語るのは、プロデューサーのケヴィン・ローダー氏(66)。本作の始まりは故ロジャー・ミッシェル監督のアイデアだった。ロックダウンで様々な映画の撮影がストップするなか、「アーカイブ映像を使ったドキュメンタリーなら作れる!」とひらめいたという。

「女王をテーマにすることが決まったとき、ロジャーは『ありきたりな王室ドキュメンタリーではなく、機知に富んでいてサプライズがある作品にしよう』と言いました」(ローダー氏)

 たしかに本作は一般的なドキュメンタリーとは趣が異なる。女王の歴史を時系列で紹介するといった手法はとらず、「自宅にて」「馬上で」「ラブ・ストーリー」などのチャプターごとに、膨大なアーカイブ映像がテンポよくつながれていくのだ。

 実際の映像に加え、王室メンバーそっくりのキャストが話題になったネットフリックスのドラマ「ザ・クラウン」や、映画「英国王のスピーチ」、コメディー番組などのシーンが数多く盛り込まれ、いかに女王が「アイコン」であるかがうかがえる。

戴冠式の日のエリザベス女王とエディンバラ公フィリップ殿下/1953年6月2日、バッキンガム宮殿(写真:The Print Collector/Alamy Stock Photo)
戴冠式の日のエリザベス女王とエディンバラ公フィリップ殿下/1953年6月2日、バッキンガム宮殿(写真:The Print Collector/Alamy Stock Photo)

■ユーモアセンスが抜群

 ここで女王の生涯を振り返ろう。1926年4月21日、ヨーク公夫妻の長女として生まれ、4歳違いの妹マーガレットと育つ。英国では毎年6月の第2土曜日に女王の「公的な誕生日」を祝う習慣があり、今年は「プラチナ・ジュビリー(70年の祝祭)」として盛大なイベントが開かれた。

 女王が生涯の伴侶となるフィリップ殿下と出会ったのは13歳のとき。第2次世界大戦では女子補助地方義勇軍に入隊し、戦後は南アフリカへの外遊など海外を飛び回る。47年に結婚、52年に父ジョージ6世の崩御に伴い、25歳で女王に即位した。

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